月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 その後ワンホールケーキを直接フォークで崩しながら食べた。

 生クリームがたっぷり使われたいちごのショートケーキ。

 王道だけど私はこれが一番美味しいと思う。

 前に紅くんに「誕生日ケーキ何がいい?」って聞かれたことを思い出した。


 ちゃんと覚えててくれたんだ・・・。


 お腹だけじゃなくて胸までいっぱいになる。

 紅くんの方をちらっと見ると微笑み返してくれた。

 その笑顔があまりにも優しくて、また泣きそうになる。

 それを誤魔化すようにケーキを口に放り込んだ。

 やっぱり甘味と安堵はバツグンに相性がいい。

 また眠気がぶり返してきて紅くんの肩にもたれかかると、口元が緩むのが見えた。





 私がお風呂に入っている間に紅くんがお布団を敷いてくれていた。

 至り尽くせりで申し訳なかったけど「誕生日ぐらい甘えたら?」って言われたから存分に甘え倒すことにした。

 前もこんな感じで丸め込まれた気がする。


 事前に用意されていたパジャマはしましま模様のモコモコパジャマだった。
< 94 / 278 >

この作品をシェア

pagetop