月ノ蝶、赤縄を結ぶ

 多分紅くんがこういうの好きなんだと思う。

 可愛いし触り心地もいいからね。


 ぽすんと紅くんの隣に腰を下ろすと頭を撫でられた。

 ついでに毛先あたりもスルスルと撫でられる。

 普段はゆるふわな私の髪が、お風呂上がりでストレートヘアになっているのが珍しいんだろうね。


 ひとしきり撫でたあとで紅くんがこう切り出した。



「そういえば茜、誕生日プレゼントで何か欲しいものとかしたいことある?」

「んー・・・」



 いきなり言われても、一番願っていたこと──紅くんと再会すること──は叶ったし、これから一緒に暮らせられるのは分かっているから、パッとは思いつかない。



「今思いつかないならまた思いついたときでいいからね。些細なことでも大丈夫だから」

「あ、なら舎弟のお名前を知りたい」



 幼少期はみんな『シャテー』って名前だと一括りにしてたけど、それはまさかの勘違いだったのでちゃんと知りたいと思う。
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