悪魔と涙と甘い恋。

「ううん。痛くないよ」

「嘘つき」


ボソリと呟いた衣吹さんは、不貞腐れてしまったのか、あたしとは反対の方向を向いた。


「嘘じゃないよ。だって、みんなに助けてもらったんだもん」

「……理由になってない」

「い、痛くないわけじゃないんだけど、みんながいてくれたからそんなに痛くなかったって言うか……えと、」


うぅ。

自分で何を言ってるのかわからないくらい、言葉がまとまらない。

つぎの言葉を、と考えてると。


チラッと衣吹さんの視線がこっちを向いて。

フッと吹き出すように笑った。



「なんで羽瑠ちゃんが必死になってるの」

「だ、だって……」


衣吹さん、よくわかんないけど怒ってるっぽいし。

どうにかしなきゃって思ったんだもん。



「良かった。その時、羽瑠ちゃんが1人じゃなくて」

「え……?」

「もし1人でお義母さんに会ってたと思うと気が気じゃなかったなぁって」


自分の気持ちを再確認するようにウンウンと頷く衣吹さん。

そんな衣吹さんを見てると、嬉しくて笑みが溢れた。


ほんと優しいなぁ、衣吹さんは。


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