悪魔と涙と甘い恋。
そんなあたしを余所に、千葉さんは静かに腰を下ろした。
「ここの方が涼しいから」
「あ、なるほど……」
少し距離を空けて千葉さんの隣に座ると、たしかに喫煙所よりかは暑くない。
むしろ風が吹いて、額に浮かんだ汗が引いていく。
「で?俺に何か用事?」
「あ、えと。敦雅さんのことなんですけど……」
「……」
「……」
う。
いざ聞くとなれば何から話せばいいのかわからなくなる。
こんなことなら、ちゃんと考えてくればよかった……!
「ふ、2人の仲、戻したくて……だけど、敦雅さんのことあんまり知らないから……千葉さんならわかるかなって」
「誰に聞いたの?それ」
「……衣吹さんです」
「ふーん」と、抑揚の無い声が聞こえて、興味が無い返事なのか、それとも思案の相槌なのかわからなかった。