悪魔と涙と甘い恋。
「敦雅さんは衣吹さんのこと嫌ってないですよね?」
「うん、嫌ってない。むしろ気にかけてる」
ほらっ……!やっぱりそう!
「気にかけてるのに、どうして避けたりするんですか?避けなかったら衣吹さんも普通に接することができると思うのに……」
「失態を犯したからじゃない?」
さっきまで鳴いていた蝉がジジッと音を立てて飛び立った。
途端に静まり返るこの空間に、変な緊張感が走る。
「守らなければならないお嬢を、守るどころか自分の感情をむき出しにした」
あたしの身体を突き抜けるように吹いた風が、やけに冷たく感じた。
ごくりと喉を動かせば、どこか遠くの方で再び蝉が鳴き始める。
「普通に接することなんかできないよ」
「……」
αの本能だからと言っても……敦雅さんは、すごく後悔したのかなって。
そう思ったら何も言えなくなった。