悪魔と涙と甘い恋。

それと同じくらい力強い眼差しに、胸が熱くなる。



「い、い……の?」


お父さんがいなくなってからあたし……ずっと、食べれなかった。

作ってもらえなくて、食べ物を探しに台所に立っても追い出され……。


みんなが捨てた物を漁る……汚い人だった……。

食べることを許してもらえなかった……。



「あたし……食べて、いいの……?許して……くれるの?」

「許すって何?当たり前じゃん」


女の人の眉毛が悲しそうに下がる。


……どうしてこの人は……あたしなんかのために、いつも悲しんでくれるの……?

……どうして……そんなに優しいの……?



優しさに触れたら泣いてしまいそうで。

グッと我慢する。


あたしは、そんな……優しくされていい人間じゃない、から……。


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