悪魔と涙と甘い恋。
けじめと選択
♢side 神楽♢
───遡る事数時間前。
組長命令で今日1日は絶対安静を食らった俺は、暇を持て余していた。
「……」
ベッドの上で腰を下ろし、吐いたため息が無音な部屋へと消えていく。
羽瑠は俺の事が好きだ。
俺といる時は甘い香りを漂わせ、少しでも意識をすれば匂いが強くなる。
ずっと気付かないフリをしていた。
もう、無理なんだ。
この手で……羽瑠に触れてしまった。
組長との約束は、ヒートの時だけだったのに。
「……」
やる事は1つだけ。
俺は自室を出て組長の部屋に向かった。
その途中で柊が中庭にいるのを見つけ、縁側が続く範囲まで近付く。
「今日掃除当番?」
タオルを首に巻いた柊は、額から汗を流しながら俺を睨んだ。
「見ればわかるでしょ」