悪魔と涙と甘い恋。
この声は組長じゃない。
隣にいた、男の人のものだ。
顔を上げればその人と目があって、ざわざわと胸騒ぎがする。
男の人がいる限り、発情期に入ればあたしは無意識に誘惑してしまう。
そして、また……煙たがられ、居場所を失う……。
自分の意思じゃなくても“Ωが悪い”って、みんな言う……。
だから嫌い……この世界の人達のことは。
とくに男の人は。
その人の視線から逃げるようにパッと目を逸らす。
「あんたの境遇からして何もいらねーかも知れねぇけど、いいのか?それで」
「……」
「あんたは実の親も嫌いだったのか?」
思わずピクリと反応してしまった。
「再婚相手の母親に虐待されてたかもしれねぇけど、実の親もそうだったのか?」
「……」