好きになってはいけない
 ユリカがすぐに間に入り込み、彼の腕を打つ。

 さらに首筋に剣を向けようとしたのを止め、いいから、と伝えて再び彼に向き合った。

「アトランティスは、知っているんだな」

 彼は、混乱した表情で小さく頷く。

 アトランティスは知っているのに、アンティリアを知らない。

 妙だ。

 アトランティス人なら、当然知って然るべきなのに。

「アトランティスの、どこ出身だ」

「俺は……違う、俺は、日本から来たんだ。橋から落ちて」

 彼はこめかみを指の腹で押さえ、情報を整理しているようだ。

 興奮しているのか、少し息が荒い。

「ニッポン? そんな街、アトランティスにあったか?」

 シーラに確認するように目を向けると、彼女は首を振る。

「まあ……いい。君のことは、しばらくこの城で監視させてもらおう。変な真似はするなよ、君を牢に入れなければいけなくなる」

 そう伝えると、彼はまだ情報を整理しきれていない表情で小さく頷いた。
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