ホウセンカ
「綺麗。また作ってくれたの?」
「既製品を買う気にはなんねぇからさ」
とりあえず、サイズがピッタリだったことに安堵する。愛茉が普段つけている指輪を拝借して確認したから間違いはないはずだが、実際指にはめるまでは少々不安だった。
「ありがとう。すごく嬉しい。ネックレスとお揃いだね、ストロベリークォーツ」
「左手は空けておいて。いずれ、そこに似合う物を作るからさ」
「……今のはプロポーズ?」
「プレプロポーズ、だろ?」
幸せそうな表情で、愛茉が頷く。オレが一番見たいのは、こういう顔だ。
「結婚なんてただの法律上の縛りって思ってたし、正直どうでもよかったんだけどさ。形にこだわる必要ねぇじゃんって。でも愛茉とずっと一緒にいられるのなら、法律にでも何でも縛られてやる」
形にこだわらない。そう言って法律上の婚姻関係を結ばない人間もいるが、結局それがこだわりになっているようにも見える。
生涯共に過ごすことを誓うのであれば、パートナーや事実婚といった言葉で濁したくはない。それが愛茉を守ることにもつながると考えるようになった。
「ダラダラと待たせる気はねぇよ。5年以内に、必ずプロポーズする。だから飽きずにオレの傍にいてほしい。愛茉がこれまで感じてきた寂しさも苦しさも、全部オレが埋めるから」
一時の感情で結婚を考えたとは思われたくない。時間が経って慣れ合いの関係になるのも嫌だ。だから自分の中で、明確に期限を決めておきたかった。
愛茉は一旦口を開こうとして、また閉じた。唇を軽く噛み締めながら、目に涙を浮かべている。
「……はい」
震える声で言って、愛茉が頷く。その右手をしっかり握り、運河に視線を向けた。
「ここで言っておきたかったんだよ。愛茉のお母さんの前で」
「うん」
「オレのこと、ちゃんと報告した?」
「うん。変人だけど、世界で一番大好きな人ですって」
鼻をすすりながら、愛茉が笑う。
手をつないだまま、運河に雪が溶け込むのをしばらく眺めていた。
「……お腹すいてきた」
「そうだな。そろそろ行くか」
「うん。スケジュール通りです」
そう言えば、小樽運河の滞在予定時間もきっちり書いてあった。ただ宿に入ってからのことは何も書かれていない。つまり、そこからはオレの好きにしていいってことだよな。
「既製品を買う気にはなんねぇからさ」
とりあえず、サイズがピッタリだったことに安堵する。愛茉が普段つけている指輪を拝借して確認したから間違いはないはずだが、実際指にはめるまでは少々不安だった。
「ありがとう。すごく嬉しい。ネックレスとお揃いだね、ストロベリークォーツ」
「左手は空けておいて。いずれ、そこに似合う物を作るからさ」
「……今のはプロポーズ?」
「プレプロポーズ、だろ?」
幸せそうな表情で、愛茉が頷く。オレが一番見たいのは、こういう顔だ。
「結婚なんてただの法律上の縛りって思ってたし、正直どうでもよかったんだけどさ。形にこだわる必要ねぇじゃんって。でも愛茉とずっと一緒にいられるのなら、法律にでも何でも縛られてやる」
形にこだわらない。そう言って法律上の婚姻関係を結ばない人間もいるが、結局それがこだわりになっているようにも見える。
生涯共に過ごすことを誓うのであれば、パートナーや事実婚といった言葉で濁したくはない。それが愛茉を守ることにもつながると考えるようになった。
「ダラダラと待たせる気はねぇよ。5年以内に、必ずプロポーズする。だから飽きずにオレの傍にいてほしい。愛茉がこれまで感じてきた寂しさも苦しさも、全部オレが埋めるから」
一時の感情で結婚を考えたとは思われたくない。時間が経って慣れ合いの関係になるのも嫌だ。だから自分の中で、明確に期限を決めておきたかった。
愛茉は一旦口を開こうとして、また閉じた。唇を軽く噛み締めながら、目に涙を浮かべている。
「……はい」
震える声で言って、愛茉が頷く。その右手をしっかり握り、運河に視線を向けた。
「ここで言っておきたかったんだよ。愛茉のお母さんの前で」
「うん」
「オレのこと、ちゃんと報告した?」
「うん。変人だけど、世界で一番大好きな人ですって」
鼻をすすりながら、愛茉が笑う。
手をつないだまま、運河に雪が溶け込むのをしばらく眺めていた。
「……お腹すいてきた」
「そうだな。そろそろ行くか」
「うん。スケジュール通りです」
そう言えば、小樽運河の滞在予定時間もきっちり書いてあった。ただ宿に入ってからのことは何も書かれていない。つまり、そこからはオレの好きにしていいってことだよな。