ホウセンカ
 でも桔平くんの言う通り、それがお節介になってしまう場合もあるんだよね。とても優しくオブラートに包んでくれていたけれど、香月さんもそういう意味で言ったんだろうし。

 私に何ができるかは、まず七海の話を聞いてから考えよう。本当は今すぐに電話したいところだけど、やっぱり会って話す方がいいよね。

 突っ走りそうな気持ちを一生懸命抑えながら、レッスン当日を待った。

「かけるん、めちゃくちゃ甘党だからさ。喜ぶかなぁっと思って」

 レッスン前に軽くお茶していると、七海がニコニコしながら言った。……これって、恋する乙女の顔では?ううん、ダメダメ。決めつけはダメ、絶対。

「でも、桔平くんが言ってたよ。あいつは甘いものなら何でもいいんだから、そんな高級なものじゃなくても……って」
「だって、他の女と差をつけたいじゃん」

 七海の顔が険しくなった。何かあったのかな。

「他の女って?」
「かけるんの周りって、結構女が多いんだよね。きっとバレンタインにはたくさんチョコ貰うと思うの。だから、戦いなわけ」
「……なんで、他の人と戦うの?」
「実はさ、この前かけるんとエッチしたんだよね」

 突然の告白に、思わずカフェオレが気管へ入りそうになる。ちょっと待って。話が飛びすぎて、頭がついていかない。

「な、な、なんでそんな」
「この前、合コン帰りにたまたま会ってさ。向こうも合コンだったらしいんだけど、お互いハズレだったから気分転換にオシャレなバーでも行こうよって誘われて。私は飲んでないけど、かけるんが結構酔っぱらっちゃって……それでまぁ、その勢いで」

 勢いで友達とエッチするとか……私には考えられない。でも七海なら有り得るし、翔流くんもノリが軽いって桔平くんが言ってたもんね。
 
「そしたらさぁ、めちゃくちゃ良かったの。もう、過去イチ。相性って本当にあるんだって感動しちゃってさ。もしかして、かけるんが私の運命の人!?みたいな」
「……そんなものなの?」
「だってもともとノリは合うし、一緒にいて楽しいし。それで体の相性バッチリなら、もう運命だと思わない?だからちょっと、本気でアプローチしてみようかなって」

 私は少女漫画脳だから、体から始まる関係っていうのが全然想像できない。付き合ってから2ヶ月も、桔平くんに我慢させちゃうぐらいだし。

 でも人それぞれ、恋の始まり方は違うんだよね。……七海のこの感情が恋なのかどうかは、よく分からないけれど。
< 171 / 408 >

この作品をシェア

pagetop