ホウセンカ
「相性って、そんなに違うものなの?」
「全然違うから!もうね、今までのエッチは何だったの?って感じ。ほんっとヤバくて。何回も意識飛んだもん」

 ……それって相性いいってことなんだ。私はいつもだから普通のことだと……あ、いえなんでもないです。

 ていうかお酒の勢いって、どうなんだろう。それまでは友達と思っていたわけだよね。エッチしたのがきっかけで、急に恋愛対象として意識しはじめるの?
 少女漫画じゃなくてティーンズラブ的な展開だから、私の守備範囲外だなぁ。
 
「……それから、翔流くんとは付き合おうかって話にならなかったの?」
「全然。やべー朝になっちゃったねーじゃあ、また!みたいな。2週間ぐらい前の話で、それきり会ってないし。LINEはしたけど、何事もなかったかのような感じ。マジでフツー」
「えぇ~……?」

 それって、どういう心境?七海の方はもうロックオン状態みたいだけど、翔流くんはどう思っているのかな。いわゆる一夜の過ちとしか思っていない?うう、めちゃくちゃ気になる。

 でも、とりあえず七海はアプローチするって言ってるし、私は頑張って見守ろう。余計なことはしない、言わない。また桔平くんに怒られちゃうもんね。

 ようやく“運命の人”を見つけた七海は、レッスンでも気合い十分。料理もお菓子作りも得意ではないって言っていたけれど、すごく一生懸命作っていた。体の関係がきっかけとはいっても、その気持ちが遊びじゃなくて本気なら、はじまりは関係ないよね。

 翔流くんのために真剣な表情でお菓子を作る七海は、いつもより可愛く見えた。やっぱり恋って偉大だと思う。

 約3時間のレッスンで、チョコレート入りのしっとりフィナンシェが完成。お花畑のようなデコレーションで見た目も可愛いし、とっても美味しそう。
 七海も満足した様子で、明日のバレンタインが楽しみだと言っていた。いろいろ上手くいくといいなぁ。

「ただいまぁ~」

 ウキウキした気分で帰宅すると、ちょうど桔平くんが洗面所から出てきたところだった。シャワーを浴びていたようで、髪が濡れている。ていうか、また下着も履いていないし。

「あ、おかえり」
「もう、下着ぐらい履いてって言ってるでしょ」
「ごめんごめん。ひとりだったからさ、つい」

 ひとり暮らしが長かった桔平くんは、お風呂やシャワーから出たら基本全裸。さすがにそれはやめてほしいって私が言ってからは、気を付けてくれているけれど。ただでさえ色気ダダ漏れなんだから、ちゃんと自覚してほしいのよね。
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