ホウセンカ
 鮮やかなタイダイ柄のシャツに、花やら蝶やらがプリントされたド派手なジャケットを羽織っている。さらにボトムスはあちこちに和柄があしらわれたパッチワークデニムで、どこを切り取っても目を引く出で立ち。
 そのいかつい風貌に思わず釘付けになっていると、男性はサングラスを外して、店内を見渡した。

 この前と髪型が違うけれど、あの鋭い眼光は間違いなく浅尾さんだ。頭の下半分を刈り上げていて、パーマがかかった髪を高い位置で結んでいる。マンバンっていうんだっけ?こういうヘアスタイル。
 ところどころにオレンジのハイライトが入っていて、おくれ毛を残してざっくり結んでいるのがアンニュイな雰囲気を醸し出している。

 でもなんか、更に派手になってるんだけど。ていうか、あんな恰好で学校行ってるの?浅尾さんって、一体何者?
 私と目が合うと、浅尾さんは微笑みながら軽く手を上げた。
 
「ごめん、遅くなって。教授に捕まっちゃってさ。話なげぇんだよ」
「ううん、大丈夫。このカフェ、落ち着くし」
「えーっと、ミックスジュースで」

 水を持って来た店員に言いながら、浅尾さんが向かいに腰を下ろした。
 ミックスジュースって、なんだか可愛い。エスプレッソとか飲んでそうなのに。

「髪型、変えたんだね。色も違うし」
「あぁ、色は変えたけど、髪型は変わってないよ。この前は、結んでなかっただけ」
「え、そうなの?」
「ほら」

 ほどいた髪が、浅尾さんの顔にはらりと落ちる。
 
「ホントだ。すごく印象変わるんだね」
「二度おいしいんだよね、オレ」

 おいしいって……何がよ。浅尾さんって、やっぱり見た目だけじゃなくて言動が独特だな。
 
「どっちが好き?結んでるのと、下ろしてるの」
「ど、どっちでもいいんじゃない?ていうか私は、爽やかな短髪が好きだもん」

 危ない危ない。どっちもかっこいいって言いそうになっちゃった。
 そうよ、髪が長い男の人は好きじゃないんだから。やっぱり、清潔感があって爽やかな短髪が一番。全然ときめいてなんていないんだから。

「愛茉ちゃんの好みではないか。そりゃ残念だな」

 浅尾さんは、下ろした髪をかき上げながら言った。こういう何気ない仕草のひとつひとつが、妙に色っぽい。この人の色気は、一体どこからきてるんだろう。
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