ホウセンカ
「人生は長い旅なんだから。旅の時には、旅程をしっかり組むでしょう?」
「いや、オレは組まねぇけど」
「私は綿密に組むもん」
「知ってる、すげぇ知ってる。ただな、人生は筋書きのないドラマとも」
「お金の話にドラマはいらないの!」
「すんません」
有り余るほど持っているからなのか、桔平くんはお金に頓着がない。それとも、そういう人のところにお金が集まるものなのかなぁ?
いずれにしても、どれだけお金があっても失うのは一瞬だから。そうならないように、ちゃんとリスクヘッジをしていかないとね。これは、そのための計画書なのです。
「……ふーん。挙式披露宴に新婚旅行の費用まで、しっかり細かく書いてあるな」
「うん。そこ、特に大事だもん」
「どこ行きたいわけ?新婚旅行」
当たり前のようにこういう話ができるのって、すごく嬉しいな。ただぼんやり夢を描いているわけじゃなくて、ちゃんと現実のこととして考えてくれているんだもんね。
「桔平くんが今まで行ったところで、私を連れて行きたいなぁって思ったところがいい」
「そりゃ選択肢が多すぎだわ」
「じゃあ、世界一周する?」
「予算オーバーじゃね?」
「その場合は、このプランDになります」
「ははっ!さすが、抜け目ねぇわ」
桔平くんが大笑いする。この笑い声と笑顔には、いつもキュンとしてしまう。
思えば、出会った時からそうだった。はじめは怖いって思っていたのに、桔平くんの笑った顔がずっと頭から離れなくて。その時点で、もう完全に好きになっていたんだよね。
そのことを思い出したらムズムズしてきちゃって、勢いよく桔平くんに抱きついた。私がいきなり抱きつくのには慣れているから、桔平くんはひとしきり頭を撫でた後、自分の膝の上に抱っこしてくれる。
「結婚式も新婚旅行も、愛茉の好きにやりなよ。一生に一度しかねぇんだからさ」
「桔平くん、真っ白なタキシード着る?」
「絶対に着ねぇ。大体、白は花嫁の色だろ?オレは引き立て役でいいんだよ。主役は愛茉なんだし」
ああもう、大好き大好き大好き。今でも定期的に“桔平くんが好きすぎてたまらない病”を発症しちゃう。こうなると、とことん甘えたくて仕方なくなるの。いつも甘えてはいるけれど、余計に。
「桔平くん、好き」
「うん」
「好き好き好き」
「はいはいはい」
しがみついて胸に頬ずりすると、桔平くんがまた頭を撫でてくれた。
こうしてくっついている時間が、一番幸せ。落ち着くのにドキドキするのは、ずっと変わらないんだよね。
大好きな声。大好きな匂い。大好きな体温。どれだけ時間が経っても、どれだけ一緒にいることが普通になっても、好きなものは好き。
「いや、オレは組まねぇけど」
「私は綿密に組むもん」
「知ってる、すげぇ知ってる。ただな、人生は筋書きのないドラマとも」
「お金の話にドラマはいらないの!」
「すんません」
有り余るほど持っているからなのか、桔平くんはお金に頓着がない。それとも、そういう人のところにお金が集まるものなのかなぁ?
いずれにしても、どれだけお金があっても失うのは一瞬だから。そうならないように、ちゃんとリスクヘッジをしていかないとね。これは、そのための計画書なのです。
「……ふーん。挙式披露宴に新婚旅行の費用まで、しっかり細かく書いてあるな」
「うん。そこ、特に大事だもん」
「どこ行きたいわけ?新婚旅行」
当たり前のようにこういう話ができるのって、すごく嬉しいな。ただぼんやり夢を描いているわけじゃなくて、ちゃんと現実のこととして考えてくれているんだもんね。
「桔平くんが今まで行ったところで、私を連れて行きたいなぁって思ったところがいい」
「そりゃ選択肢が多すぎだわ」
「じゃあ、世界一周する?」
「予算オーバーじゃね?」
「その場合は、このプランDになります」
「ははっ!さすが、抜け目ねぇわ」
桔平くんが大笑いする。この笑い声と笑顔には、いつもキュンとしてしまう。
思えば、出会った時からそうだった。はじめは怖いって思っていたのに、桔平くんの笑った顔がずっと頭から離れなくて。その時点で、もう完全に好きになっていたんだよね。
そのことを思い出したらムズムズしてきちゃって、勢いよく桔平くんに抱きついた。私がいきなり抱きつくのには慣れているから、桔平くんはひとしきり頭を撫でた後、自分の膝の上に抱っこしてくれる。
「結婚式も新婚旅行も、愛茉の好きにやりなよ。一生に一度しかねぇんだからさ」
「桔平くん、真っ白なタキシード着る?」
「絶対に着ねぇ。大体、白は花嫁の色だろ?オレは引き立て役でいいんだよ。主役は愛茉なんだし」
ああもう、大好き大好き大好き。今でも定期的に“桔平くんが好きすぎてたまらない病”を発症しちゃう。こうなると、とことん甘えたくて仕方なくなるの。いつも甘えてはいるけれど、余計に。
「桔平くん、好き」
「うん」
「好き好き好き」
「はいはいはい」
しがみついて胸に頬ずりすると、桔平くんがまた頭を撫でてくれた。
こうしてくっついている時間が、一番幸せ。落ち着くのにドキドキするのは、ずっと変わらないんだよね。
大好きな声。大好きな匂い。大好きな体温。どれだけ時間が経っても、どれだけ一緒にいることが普通になっても、好きなものは好き。