ホウセンカ
「ヒデ、どないしたんやろ?」
「はっはーん。さてはヒデちゃん……愛茉ちゃんに一目惚れしたなぁー?」
ヨネちゃんが右手でメガネを上下させながら、得意げな表情を浮かべた。
え、そういうこと?でもまぁ仕方ないか。私、可愛いんだもん。一目惚れするのも分かる。
「どうする浅尾きゅん?ライバルしゅつげーん!」
「ライバルなんかにゃなんねぇよ。愛茉がオレ以外を好きになるわけがない」
桔平くんは、無表情でキッパリ言い切った。……なんか恥ずかしい。いや、嬉しいけど。でも恥ずかしい。桔平くんって、平気でこういうこと言うんだよね。
「わぉー情熱的すぎて燃えちゃいそうー!奥さまぁ、聞きましたぁー?」
「いやっ!かっこええわぁー!さすが、藝大生が選ぶ抱かれたい男ナンバーワンですよねぇ、奥さま!」
またヨネちゃんと小林さんの井戸端会議ネタ?が始まった。何なの、藝大生が選ぶ抱かれたい男ナンバーワンって……。本当にあるわけじゃないよね?まさかね。
「で、長岡の絵がこっち」
何事もなかったかのように、案内を再開する桔平くん。ヨネちゃんと小林さんは、まだ漫才みたいなことをやっている。ツッコミ役が不在だけど……と、とりあえず絵画鑑賞しなくちゃ。
「うわぁ、素敵」
長岡さんの絵は、いわゆる美人画というものだった。でも日本的な和服美人ではなく、現代的な女性の顔のアップを大胆に描いている。凛とした表情で目に力があって、どの作品もすごくかっこいい。
4人とも自分の強みをしっかり持っているんだなぁ。それぞれ特徴があって、感じられる空気感みたいなのも全然違う。やっぱり、人柄が出ているのかもしれない。
でも桔平くんは、お父さんが風景画を描いていたから自分も描いているという感じもする。自分自身が描きたいものとは違うんじゃないかな。
それでも桔平くんの絵は魅力的で、訪れるお客さんたちは必ず目の前でしばらく立ち止まっていた。
言葉だけでは上手く表現できないけれど、桔平くんの絵には人を惹きつける何かがある。だから多くの人から評価されるのは当たり前なのに、本人はひとつも納得していない。この前もなにかの公募で賞を貰っていたのに。
自分の絵に対する悩みは、まだまだ抱えたまま。家ではスケッチブックにたくさんの絵を描いているけれど、それを作品に落とし込めていない。
自分自身を表に出す。小さい頃から周りに否定され続けてきた桔平くんにとって、それは決して簡単なことではないんだろうな。
「はっはーん。さてはヒデちゃん……愛茉ちゃんに一目惚れしたなぁー?」
ヨネちゃんが右手でメガネを上下させながら、得意げな表情を浮かべた。
え、そういうこと?でもまぁ仕方ないか。私、可愛いんだもん。一目惚れするのも分かる。
「どうする浅尾きゅん?ライバルしゅつげーん!」
「ライバルなんかにゃなんねぇよ。愛茉がオレ以外を好きになるわけがない」
桔平くんは、無表情でキッパリ言い切った。……なんか恥ずかしい。いや、嬉しいけど。でも恥ずかしい。桔平くんって、平気でこういうこと言うんだよね。
「わぉー情熱的すぎて燃えちゃいそうー!奥さまぁ、聞きましたぁー?」
「いやっ!かっこええわぁー!さすが、藝大生が選ぶ抱かれたい男ナンバーワンですよねぇ、奥さま!」
またヨネちゃんと小林さんの井戸端会議ネタ?が始まった。何なの、藝大生が選ぶ抱かれたい男ナンバーワンって……。本当にあるわけじゃないよね?まさかね。
「で、長岡の絵がこっち」
何事もなかったかのように、案内を再開する桔平くん。ヨネちゃんと小林さんは、まだ漫才みたいなことをやっている。ツッコミ役が不在だけど……と、とりあえず絵画鑑賞しなくちゃ。
「うわぁ、素敵」
長岡さんの絵は、いわゆる美人画というものだった。でも日本的な和服美人ではなく、現代的な女性の顔のアップを大胆に描いている。凛とした表情で目に力があって、どの作品もすごくかっこいい。
4人とも自分の強みをしっかり持っているんだなぁ。それぞれ特徴があって、感じられる空気感みたいなのも全然違う。やっぱり、人柄が出ているのかもしれない。
でも桔平くんは、お父さんが風景画を描いていたから自分も描いているという感じもする。自分自身が描きたいものとは違うんじゃないかな。
それでも桔平くんの絵は魅力的で、訪れるお客さんたちは必ず目の前でしばらく立ち止まっていた。
言葉だけでは上手く表現できないけれど、桔平くんの絵には人を惹きつける何かがある。だから多くの人から評価されるのは当たり前なのに、本人はひとつも納得していない。この前もなにかの公募で賞を貰っていたのに。
自分の絵に対する悩みは、まだまだ抱えたまま。家ではスケッチブックにたくさんの絵を描いているけれど、それを作品に落とし込めていない。
自分自身を表に出す。小さい頃から周りに否定され続けてきた桔平くんにとって、それは決して簡単なことではないんだろうな。