ホウセンカ
 それにしても桔平くんって、私が他の男の人に言い寄られても平気なのかな。鋭い桔平くんが、長岡さんの気持ちに気がついていないとは思えないのに。ヨネちゃんに言い切っていたように、私が桔平くん以外を好きにならないっていう絶対的な自信があるから?

 その通りなんだけど、それでもちょっとはヤキモチを妬いてほしい気もする。こいつはオレだけのものだ!みたいな。そういう独占欲むき出しなの、少し憧れなんだよね。少女漫画の読みすぎ?

 まぁいいや。桔平くんは私と違って感情の起伏が少ない人だから、期待しても無駄だろうし。
 とりあえず、この辺りで評判のラーメン屋でお昼を食べてから帰ろう。たまにはひとりで開拓するのもいいよね。

 スマホで検索して、歌舞伎町にあるラーメン屋で塩ラーメンを食べた。あご出汁のスープが絶品だったけれど、やっぱり桔平くんとの思い出の味には勝てない気がする。また今度、あのお店へ連れて行ってもらおうかな。
 その後はあまりウロウロせず電車に乗って、いつものスーパーで買い物をして帰った。

 桔平くんが帰宅したのは、9時ちょっと前。たくさんの人と接したからなのか、少し疲れているみたい。

 駅に着いてLINEをくれていたので、帰って来るタイミングでグラタンが焼き上がるように準備をしていた。冷蔵庫からシーザーサラダを出して、さっそく夕ご飯をいただく。ちなみに、ドレッシングも手作りです。
 
「ねぇ。桔平くんって、ヤキモチ妬かないの?」

 食べながら、ふと長岡さんのことを思い出した。
 
「なんだよ急に」
「今日の長岡さんのこととか、なんとも思わない?」
「別に、なんとも。愛茉がオレにベタ惚れなのは分かってるからな」
「ふぅん」

 ……つまんない。それだけ信頼されているってことだけども。もうちょっと、なんかさぁ。オレの愛茉に手を出すな!的なのがほしい。

「オレに妬いてほしかったわけ?」
「別にぃ」
「まぁぶっちゃけヨネの言うとおり、愛茉に一目惚れした感はあったよな、長岡のヤツ」
「……やっぱり?帰る時に私が置き忘れてたハンカチを持ってきてくれたけど、またじっと見つめられちゃって。しかも可愛いって言われちゃったの。ねぇ、妬く?」
「そんなんでいちいち妬いてたら身がもたねぇよ。愛茉の外見に惚れるヤツなんて、山ほどいるだろ。でも愛茉の本当の可愛さは、オレしか知らねぇもん。だから別に妬かねぇ」

 あれ、本当に?本当に妬いてないの?なんだか少し拗ねているように見えるのは、気のせい?サラダにフォークをグサグサ刺してるし。
 もうちょっと突っ込んでみようかな。
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