ホウセンカ
「なんか新鮮なことないかなぁ」
「夏休みに旅行でもしたら?」
「無理。翔流、法科大学院受けるからさ。もう勉強漬けよ……」
「あ、そっか……」

 翔流くんは、法学部だったっけ。大学院に行った後は司法試験も受けるんだろうな。天才肌で必死に勉強しなくてもサラリとできちゃうタイプだって桔平くんが言っていたし、一発で合格しそうな気もする。

「大学生ってさ、2年生が一番楽しいって言うじゃん?なのにこれよ。付き合う相手、間違ったかなぁ」
 
 悪態ばかりついているけれど、なんだかんだ言いながら2人はラブラブだし、何も心配はしていない。あれこれと言うのは、七海の性格。本気で後悔しているわけじゃないと思う。

 翔流くんを見ていても、七海のことが本当に好きなんだなぁって伝わるし。尻に敷かれている感じはあるけれど、きっとそれが2人にとってしっくりくる形なんだろうな。

「ここのパフェ、美味しかったね。今度は翔流と一緒に来よっと」
 
 パフェを完食してお店を出ると、さっきまで文句を言っていたとは思えないほど穏やかな表情で七海が言った。

 ほらね、やっぱり仲良し。美味しいものを食べた時って、自分だけじゃなくて好きな人と一緒に食べたいって思うものだもん。それに翔流くんは甘党だしね。七海の言葉に、なんだかほっこりとした。

「ていうか、今日寒くない?」
「そうかな?」
「そうだった、愛茉は雪国育ちだ」

 4月に入ったけれど、確かに今日は風が少し冷たいかもしれない。七海が寒がりなので、あまり外には出ず、ビルの中や地下街を歩いた。
 数日前は上着がいらないほどだったのに。この時期は寒暖差が大きいから、風邪を引かないように気をつけなきゃ。

 私は元々体が丈夫な方で、上京してからこれまで大きく体調を崩したことはない。そういえば何故か生理痛も緩和されてきた。桔平くんと一緒にマンションのジムへ通うようになったし、規則正しい生活ができているからかな。

 実は不眠症気味だと言っていた桔平くんも、今は大体私と一緒の時間に寝て、一緒の時間に起きている。やっぱり寝起きは悪いけれど前ほどではなくて、かなり改善された……と思う。多分。ご飯も3食しっかり食べさせているし、健康に長生き大作戦は今のところ順調です。

「で、浅尾っちは何が欲しいって?」
「特にないって言われた」
「それ困るやつー」

 七海と一緒に、普段はほとんど来ない百貨店に来た。実は今日の目的のひとつは、桔平くんの誕生日プレゼント選び。今月18日が、22歳の誕生日なのです。
 欲しいものがないか事前に訊いたけれど、物欲がない桔平くんはかなり悩んでいたんだよね。
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