ホウセンカ
 2人でひとつ。確かに、その言葉はしっくりくるかもしれない。だって私も桔平くんも、ひとりじゃ不完全だから。一緒にいるからこそ、パズルのピースが全部そろう。

「だから、自信を持って大丈夫。あなたは桔平の人生に必要な人よ。お互いにとってかけがえのない、世界でたったひとりの人なんだからね」

 楓お姉さんの言葉って、どうしてこんなにエネルギーがあるんだろう。不思議と前向きな気持ちにさせてもらえる。

 少しずつ減ってはきたけれど、いまだに桔平くんの気持ちを確認したくなることが度々あるんだよね。
 それは桔平くんを信じていないからじゃなくて、ふとした瞬間、自分に自信がなくなるから。こんな私でいいのかなっていう気持ちが出てくるの。

 だけど楓お姉さんに言われると、何故だか大丈夫だと思えてきた。

「分かりました……自信、持ちます」
「もう、可愛い!」

 いきなりガバッと抱きしめられた。やっぱりいい匂いがするし、引き締まっているのに柔らかい体に包まれて、思わず赤面してしまう。

「私もたまにハグしたくなるから、気持ちめっちゃ分かります。愛茉って、小動物っぽくて可愛いですよね」

 七海が私の顔を見て、笑いを堪えている。
 だって、こんな美人に抱きしめられたら、誰だってドキドキするでしょう。なんなら、桔平くんにされるより緊張するし。

「桔平が羨ましいわぁ。こんなに可愛い子を毎日ハグできるんだもの」
「ま、毎日では……」

 嘘です。本当は毎日してくれています。
 
「あら、そうなの?ダメよ、スキンシップは毎日しっかり取らないと。一緒に住んでいるんでしょう?」
「は、はい」
 
 スキンシップって……べ、別にエッチな意味じゃないよね?

 体を離すと、楓お姉さんは私の乱れた髪を手で直してくれた。あ、やっぱり桔平くんにそっくり。性格は真逆っぽいけれど、こういう優しい表情は本当に似ている。

「七海ちゃんも、翔流とスキンシップ取ってる?」
「それはもう、バリバリです」
「翔流も寂しがり屋で甘えん坊でしょう。あなたみたいにハキハキした子がピッタリだわ」

 やっぱり、楓お姉さんもそう思うよね。七海と翔流くんは、誰が見たってお似合いカップルだよね。なんだか嬉しいな。
 満足そうに何度か頷いた後、楓お姉さんが腕時計を見た。

「あ、そろそろ行かなくちゃ。ベラベラと喋ってしまって、ごめんなさいね」
「いえ、お会いできて嬉しかったです」
「そうだわ。ねぇ愛茉ちゃん。17日、横浜の実家へ来ない?」
「え?」

 突然の申し出に、一瞬戸惑ってしまった。横浜の実家って……つまり、桔平くんのご実家だよね。
< 216 / 408 >

この作品をシェア

pagetop