ホウセンカ
ほどなくして楓お姉さんが到着して、お母様と原田さんが食事の支度を始める。お手伝いを申し出たけれど、今日はゲストだから座っていてと言われて、ソワソワしながら待っていた。ちなみに、楓お姉さんはお料理苦手なんだって。
「桔平が子供の頃は、毎年こうやって誕生日ランチをしていたわよね」
そう言って、楓お姉さんが食前酒の白ワインを一口飲む。なんて絵になるんだろう。優雅すぎる。
ちなみに私はまだ未成年なので、オレンジジュース……。とても美味しいからいいけれど、私もいつか楓お姉さんのようにワインをかっこよく飲む大人になりたいな。
「この感じ懐かしいわね、パパ」
「そうだね。中学に上がると桔平君はこの時期家にいなかったし、10年ぶりぐらいになるのかな」
「ああ……大体海外にいましたね、今の時期は」
「今年は行かないのかい?」
「愛茉と過ごす時間の方が大切なので」
本條さんの前でも、桔平くんはそういうことを恥ずかしげもなく言う。隣にいると照れてしまうけれど、その真っ直ぐな姿勢と潔さは、やっぱり素敵だと思った。
「楓から聞いているが、2人は将来結婚するつもりだとか?」
「はい。彼女にも、意思は伝えています。ただ、学生の間にやるべきことがあるので、正式なプロポーズはしていませんが」
「そうか。愛茉さんも同じ気持ちということで、いいのかな?」
本條さんに視線を向けられ、改めて背筋を伸ばす。大企業の創業者一族ということだけあって、やっぱり一般人とは大違い。穏やかなのに、なにか圧倒されるようなオーラを感じた。
「は、はい!私も、まだ学生ですし……学ぶべきことがたくさんあるので。桔平く……あ、えっと、桔平さんを支えられるように、精進するつもりで」
「愛茉ちゃん、普段通りでいいのよ。リラックスしてちょうだい」
楓お姉さんが優しく微笑みかけてくれるけれど、普段通りなんて無理に決まっている。仕草とか言葉遣いとか、いろいろなことが気になってしまって。マナーのない子って思われたらどうしよう。そればかりが頭の中をグルグルと巡っていた。
「桔平“さん”って。言われたことねぇし」
また笑みを浮かべる桔平くんを、本條さんと楓お姉さんが目を細めて見つめる。
「ね、パパ。桔平、穏やかになったでしょう?」
「ああ、そうだね」
「オレ、そんなに変わりましたか?」
「最後に会ったのは大学入学直前だったかな?その時と比べたら、表情がとても優しくなったと感じるよ」
桔平くんと本條さんって、3年も会ってなかったんだ。だからよそよそしく感じるのかな。
「そうですか。だとしたら、すべて愛茉のおかげですよ」
ノンアルコールワインを飲みながら、お天気の話でもするかのように軽い口調で桔平くんが言った。
「だからオレには愛茉が必要なんです。この先も、ずっと」
あ、泣きそう。でも泣いたらメイク崩れちゃうから、我慢しなきゃ。
本條さんや楓お姉さんの前でも、こんな風に言い切ってくれたのが嬉しい。改めて桔平くんの愛情の深さを感じて、胸がいっぱいになってしまった。
「桔平が子供の頃は、毎年こうやって誕生日ランチをしていたわよね」
そう言って、楓お姉さんが食前酒の白ワインを一口飲む。なんて絵になるんだろう。優雅すぎる。
ちなみに私はまだ未成年なので、オレンジジュース……。とても美味しいからいいけれど、私もいつか楓お姉さんのようにワインをかっこよく飲む大人になりたいな。
「この感じ懐かしいわね、パパ」
「そうだね。中学に上がると桔平君はこの時期家にいなかったし、10年ぶりぐらいになるのかな」
「ああ……大体海外にいましたね、今の時期は」
「今年は行かないのかい?」
「愛茉と過ごす時間の方が大切なので」
本條さんの前でも、桔平くんはそういうことを恥ずかしげもなく言う。隣にいると照れてしまうけれど、その真っ直ぐな姿勢と潔さは、やっぱり素敵だと思った。
「楓から聞いているが、2人は将来結婚するつもりだとか?」
「はい。彼女にも、意思は伝えています。ただ、学生の間にやるべきことがあるので、正式なプロポーズはしていませんが」
「そうか。愛茉さんも同じ気持ちということで、いいのかな?」
本條さんに視線を向けられ、改めて背筋を伸ばす。大企業の創業者一族ということだけあって、やっぱり一般人とは大違い。穏やかなのに、なにか圧倒されるようなオーラを感じた。
「は、はい!私も、まだ学生ですし……学ぶべきことがたくさんあるので。桔平く……あ、えっと、桔平さんを支えられるように、精進するつもりで」
「愛茉ちゃん、普段通りでいいのよ。リラックスしてちょうだい」
楓お姉さんが優しく微笑みかけてくれるけれど、普段通りなんて無理に決まっている。仕草とか言葉遣いとか、いろいろなことが気になってしまって。マナーのない子って思われたらどうしよう。そればかりが頭の中をグルグルと巡っていた。
「桔平“さん”って。言われたことねぇし」
また笑みを浮かべる桔平くんを、本條さんと楓お姉さんが目を細めて見つめる。
「ね、パパ。桔平、穏やかになったでしょう?」
「ああ、そうだね」
「オレ、そんなに変わりましたか?」
「最後に会ったのは大学入学直前だったかな?その時と比べたら、表情がとても優しくなったと感じるよ」
桔平くんと本條さんって、3年も会ってなかったんだ。だからよそよそしく感じるのかな。
「そうですか。だとしたら、すべて愛茉のおかげですよ」
ノンアルコールワインを飲みながら、お天気の話でもするかのように軽い口調で桔平くんが言った。
「だからオレには愛茉が必要なんです。この先も、ずっと」
あ、泣きそう。でも泣いたらメイク崩れちゃうから、我慢しなきゃ。
本條さんや楓お姉さんの前でも、こんな風に言い切ってくれたのが嬉しい。改めて桔平くんの愛情の深さを感じて、胸がいっぱいになってしまった。