ホウセンカ
色鮮やかなオオゴチョウ
「みんなグラス持ったー?それじゃあ……カンパーイ!」

 翔流くんの号令の後、カチンとグラスを合わせる音が響く。私の隣では、桔平くんが無表情のままサラダを食べ始めた。やっぱり少し、ご機嫌ななめ。

 すっかり秋めいてきた10月中旬。今日は4対4の合コン……ではなく、飲み会?です。場所は東京駅近くの個室バル。もちろん、翔流くんチョイスのお店。

 そして今日のメンバーは……

「いやっ!こない可愛い女の子たちと飲み会やなんて、ドキがムネムネやん!なぁ、ヒデ!」
「あ……う、うん……そうだね……」

 最初からテンションMAXな小林さんと、少々困惑気味の長岡さん。更に、一言も発することなく、ひたすら食べ続ける桔平くん。メンズの中でまともなコミュ力があるのは、翔流くんだけだなぁ……。

「藝大ってどんな感じなのか興味あって、愛茉にお願いしたんですよぉ。時間作ってもらって、ありがとうございますー!」

 小林さんの赤坊主とTシャツに若干引きつつ、その向かいに座る結衣が愛嬌を振りまく。長岡さんの正面にいるのは、葵。葵はどちらかというと大人しい子だから、あまり喋らず、ただニコニコしていた。

 そして葵の横が私、更にその横に桔平くん。で、私たちの向かい、つまり長岡さんの隣に翔流くんと七海……という感じです。

 どうしてこのメンバーで飲み会をすることになったかというと、話は10日ほど前に遡ります。

「結衣も彼氏ほしい!」

 ある日の昼休み。七海と学食でご飯を食べていたら、日替わり定食をドンとテーブルに置きながら結衣が叫んだ。
 ちなみにそのトレーには、定食以外にも惣菜パンが3つ。結衣は細いのに、とっても大食いなのです。もちろん定食のご飯も大盛り。すぐにプクプク肉がついてしまう私からすれば、すごく羨ましい。

「愛茉と七海は、ちゃっかり合コンで彼氏作っちゃってるし。ずるい!」
「愛茉は別として、私は合コンがきっかけってわけじゃないしー。翔流とは、合コン前から知り合いだもん」
「大体さぁ、遊び人だった男が運命の人と出会って一途になって溺愛彼氏になるなんて、どこの少女漫画よ。愛茉、ずるい!」
「そ、そんなこと言われても」

 そういえば桔平くんが遊んでいたって話をしてきたの、結衣だったよね。私、少し根に持ってるんだぞ。性格悪いもので。

 結衣はお調子者というか、軽はずみな言動がちょいちょいあるから、適度に距離を保って付き合っている。もちろん友達としては大好きなんだけど、七海みたいに何でも話せる感じではない。
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