ホウセンカ
 私はさっそく、デートの服選びを始めた。
 学校がある日は大きいバッグじゃないといけないけど、日曜日なら好きなだけオシャレができる。クローゼットからたくさんの洋服を引っ張りだして、着ていく服を考えた。

 桔平くんは背が高いから、できるだけつり合うように少し高めのヒールを履こうかな。でも足が痛くなって迷惑はかけたくないし。厚底の歩きやすいものにしよう。
 桔平くんはきっと派手だろうから、私はシンプル系にした方がいいよね。無地のものにしておこう。

 いろいろと考えていたら、作ったパスタを放置していたことに気がつく。
 明太子パスタはすっかりのびきっていたけれど、その日は久しぶりに幸せな気分でベッドに入った。

 でも、日曜日までがとても長くて。あと5日、あと4日と毎日カウントダウンしていた。
 やっぱり別の洋服がいいかなって思って、七海に買い物を付き合ってもらったり。新しいアイシャドウも買って、メイクが得意な七海がコツを教えてくれたりして。

 ただ連絡を待っている時とは全然違って勉強がよく捗ったし、毎日ウキウキしていた。
 体調万全でいられるように、前日の土曜日は夜9時過ぎにはベッドに入った。楽しみすぎて、すぐには寝つけなかったけれど。目を閉じて、翌日のことをいろいろと想像しているうちに眠りに落ちた。

 待ち合わせは荻窪駅の南口に朝9時。高円寺からだと上野と反対方向になるのに、桔平くんはわざわざこっちに来てくれるんだって。
 はやる気持ちを一生懸命抑えながら駅に向かうと、桔平くんはもう着いていた。

 あ、今日は髪結んでる。そして予想通り派手なファッションで、スタイルの良さも相まって、ただ立っているだけで周りの視線を集めていた。

 今日の桔平くんの服装は、胸元にカラフルな小花の刺繍が入っているピンクのチャイナ服に、ボルドーを基調にした全面が蔦花文様のロングカーディガン。

 ボトムスはサイドラインに大きな花の刺繡が入ったコーラルレッドの裾絞りパンツで、さらにピンクの丸型サングラスという出で立ちだった。
 まさか、パンダを観に行くからチャイナ風?

「おはよう。ごめんね、待たせた?」

 駆け寄ると、桔平くんが笑顔を見せる。サングラスの奥の瞳がすごく優しくて、桔平くんのこの顔を見る度にキュンとしてしまう。
 
「おはよう。大丈夫だよ、時間通りだし」
「なんか今日の桔平くんの服、中国っぽいね」
「ん?ああ、そうかも」

 あれ、別に意識してなかったっぽい?

 でも足元は黄金の龍の刺繍が入っているカンフーシューズ。完璧にチャイナ風だし。ピアスも服装に合わせているみたいで、七宝焼きっぽいぶら下がりピアスをつけている。

 いつも個性的だけど、やっぱりオシャレだなぁ。
< 33 / 408 >

この作品をシェア

pagetop