ホウセンカ
アサギリソウをリースにして
3月に入って、急激に暖かくなった。衣替えをする暇もなく、厚手のコートの出番は強制終了。そしてあっという間に桜が咲き、散っていった。
もうすぐ私は大学3年生になって、桔平くんは大学院へ入学する。
1年生の5月に桔平くんと出会ってから、もう3度目の春。いつもと変わらない穏やかな生活に安心しきっているけれど、たまに感じることがあるの。本当に、このままでいいのかなって。
それは、漠然とした不安。理由はハッキリとは分からない。だけどきっと、あの話があったからだと思う。
そんな中で、桔平くんがひとり旅に出た。と言っても海外ではなくて、沖縄へ4泊5日の旅。
もしかすると、桔平くんも私と同じように感じていたのかもしれない。だから新しい景色を見つけに行ったのかな。
ひとりにしてごめんと言われたけれど、そんなのはどうってことない。桔平くんなりに考えたいことがあるんだと思うし、邪魔はしたくないから。
桔平くんが沖縄へ旅立った翌日の土曜日。バイト先の塾の春期講習があって、私は朝早くから忙しく働いていた。
中学受験対策の塾だから、指導内容は一般的な小学校の授業より少し複雑。でもやっぱり子供たちに勉強を教えるのは楽しくて、自分の進路はこれしかないと思った。
そして15時過ぎにバイトを終えて、充実した気分で塾の外へ出る。
今日もひとりだし、夕ご飯をどうしようかなと考えながら駅の方へ歩いていくと、突然後ろから声をかけられた。
「こんにちは、愛茉さん」
振り返ると、スミレさんが立っていた。
「こ、こんにちは……」
ほとんど反射的に挨拶を返しながら、この人が何故ここにいるのか、頭の中でグルグルと考えた。
私の名前を知っていたことは桔平くんに聞いたけれど、どうしてバイト先も知っているの?しかも終わる時間も分かってた?なんだか怖いな。
「少し時間をいただける?貴女と2人で、話したいことがあって」
「え……あ、は、はい」
断れなくて、つい頷いてしまった。
「じゃあ、どこかでコーヒーでも飲みましょう」
そう言って、さっさと歩き出すスミレさん。なんかこの人、有無を言わせない感じがある……。
黙ってついて行くと、スミレさんは商店街の中にあるカフェへ入って行った。土曜日だから、店内はそこそこ賑わっている。
カウンターでドリンクを注文して、奥の席へと座った。向かい合うと、めちゃくちゃ緊張するんですけど。
もうすぐ私は大学3年生になって、桔平くんは大学院へ入学する。
1年生の5月に桔平くんと出会ってから、もう3度目の春。いつもと変わらない穏やかな生活に安心しきっているけれど、たまに感じることがあるの。本当に、このままでいいのかなって。
それは、漠然とした不安。理由はハッキリとは分からない。だけどきっと、あの話があったからだと思う。
そんな中で、桔平くんがひとり旅に出た。と言っても海外ではなくて、沖縄へ4泊5日の旅。
もしかすると、桔平くんも私と同じように感じていたのかもしれない。だから新しい景色を見つけに行ったのかな。
ひとりにしてごめんと言われたけれど、そんなのはどうってことない。桔平くんなりに考えたいことがあるんだと思うし、邪魔はしたくないから。
桔平くんが沖縄へ旅立った翌日の土曜日。バイト先の塾の春期講習があって、私は朝早くから忙しく働いていた。
中学受験対策の塾だから、指導内容は一般的な小学校の授業より少し複雑。でもやっぱり子供たちに勉強を教えるのは楽しくて、自分の進路はこれしかないと思った。
そして15時過ぎにバイトを終えて、充実した気分で塾の外へ出る。
今日もひとりだし、夕ご飯をどうしようかなと考えながら駅の方へ歩いていくと、突然後ろから声をかけられた。
「こんにちは、愛茉さん」
振り返ると、スミレさんが立っていた。
「こ、こんにちは……」
ほとんど反射的に挨拶を返しながら、この人が何故ここにいるのか、頭の中でグルグルと考えた。
私の名前を知っていたことは桔平くんに聞いたけれど、どうしてバイト先も知っているの?しかも終わる時間も分かってた?なんだか怖いな。
「少し時間をいただける?貴女と2人で、話したいことがあって」
「え……あ、は、はい」
断れなくて、つい頷いてしまった。
「じゃあ、どこかでコーヒーでも飲みましょう」
そう言って、さっさと歩き出すスミレさん。なんかこの人、有無を言わせない感じがある……。
黙ってついて行くと、スミレさんは商店街の中にあるカフェへ入って行った。土曜日だから、店内はそこそこ賑わっている。
カウンターでドリンクを注文して、奥の席へと座った。向かい合うと、めちゃくちゃ緊張するんですけど。