ホウセンカ
 桔平くんが帰ってくる日は、待ちきれなくて空港まで迎えに行った。
 何度もフライト情報を見て、定刻通り16時半に着陸したのを確認。バックパックひとつだから荷物は預けていないだろうし、もうすぐ出てくるはず。

 はぁ、なんだろう。やたらドキドキする。早く顔が見たい。早くギュッてしてほしい。

 ずっとソワソワしながら待っていると、ようやく到着ロビーに桔平くんの姿が見えた。どれだけ人が多くても、すぐ分かっちゃうもんね。

 私を見つけた桔平くんが、サングラスを外して満面の笑みを浮かべた。あぁどうしよう、とてつもなく胸がキュンキュンしている。
 
「桔平くん、おかえりなさい!」
「ただいま、愛茉」

 嬉しくて思わず駆け寄ると、人目も憚らず思いきり抱き締められる。恥ずかしさよりも嬉しさが勝っていて、私も桔平くんの背中にしがみついた。

 あぁ、大好きな匂いだ。たった5日なのに、何倍も長く感じたよ。会いたくて会いたくて、たまらなかった。こんな気持ち、いつぶりだろう?桔平くんも同じように思ってくれていたのかな。

「はぁ~旅から帰ってきてこんなにホッとしたの、初めてかもしんねぇ」

 帰宅して荷物を降ろすと、桔平くんはベッドで大の字になった。

 嬉しいな。今日からまた隣にいてくれるんだ。ひとりで寝るには、このベッドは大きすぎるよ。桔平くんがいないのに、いつもの癖で右側のスペースを空けちゃうし。だから隣にスヌーピーのぬいぐるみを置いて、寂しさを紛らわしていた。

「愛茉、おいで」
 
 上着をハンガーに掛けていると、桔平くんが寝転がったまま手招きをする。近づいたら腕を引っ張られて、桔平くんの上に倒れ込んだ。

 優しく髪を撫でられる。久しぶりのキスは、なんだか照れくさい。そして、どうしようもなくドキドキする。たった5日なのにね。

 長いキスの後、今度は桔平くんが私に覆い被さった。落ちてくる唇を何度も何度も受け止めて、だんだん頭がボーっとしてくる。

「5日分、味わっていい?」

 カーディガンを脱ぎながら桔平くんが言った。久しぶりに見る、少し雄っぽい顔。やばい。心臓が爆発しそう。

「お、お風呂は?」
「野暮なこと言うなよ。後でゆっくり入ろうぜ」

 私のブラウスのボタンを、桔平くんがひとつずつ外していく。プルオーバーを一気に脱がされるよりもドキドキしてしまう。
 
「な、な、なんか緊張する」
「なんで?」
「だって久しぶりだもん」
「1週間くらいしねぇこと、普通あるじゃん」
「そ、そうだけど。キスとかはするじゃない」
「まぁな」

 体温を感じること自体が久しぶりだから、妙に心臓がうるさい。
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