ホウセンカ
おまけのおはなし「未来の予感」
同棲が決まって数日後のこと。愛茉から1枚の紙を渡された。
「なんこれ」
「同棲するにあたって決めておきたいことリスト、作りました」
出たよ。愛茉は細かくて神経質だから、同棲するとなるとアレコレ気になることが出てくるだろうとは思っていた。
正直、面倒くさい。ただ愛茉の機嫌を損ねる方が大惨事なので、仕方なくリストに目を通した。……いや、ぱっと見でも項目が多すぎるだろ。
「こんなにあんの?」
「えー?たった50個じゃない」
……もう何も言う気にならない。よくこんなに思いつくな。
生活費はどう管理するか……これは確かに、決めておいた方がいい。家事の分担……できる方ができる時にやればよくないか?
あとは……風呂に入る頻度、朝シャワーは浴びるのか、トイレットペーパーはシングルかダブルか、ベッドのどちら側に寝るのか、休日の朝は何時頃起きるのか、友人などを自宅に呼ぶか、飲み・遊びの頻度、予定の報告はどのようにするか……細かい。細すぎる。
「……なんか、今更って感じじゃね?ほとんどオレの家に泊まってるのに」
「お泊まりと一緒に生活するのは別です!」
「いやまぁそうなんだけど。ベッドのどちら側に寝るかとか、もう決まってんじゃん」
「改めて確認したいの。それによって、どっち側に私の机置くか変わってくるし」
ちなみに、寝る時のポジションは並んで歩く時と同じだ。オレは自分の左側に愛茉がいるとやけに落ち着くし、愛茉もオレが右側にいる方がいいらしい。だからこの項目はもうオッケーだな。
「この風呂に浸かる頻度ってのは……」
「水道代とガス代の問題です。節約できるところはしたいから、毎日お風呂を溜めるのはなぁ……って。ここの浴槽大きいし」
「一緒に入ればよくね?」
「……毎日はヤダ」
愛茉が頬を赤らめる。たまにならいいってことか。そこはしっかり覚えておこう。
「それよりも大切なのは、やっぱりお金のことだと思うの。きちんと家計簿つけて管理しなくちゃ」
「え、めんどくせ」
「だから、それは私がやります。桔平くん名義で共同口座を作って、そこに生活費をお互いに入金するの。そうしたら管理が楽でしょ?」
「あぁ、まぁね……オレは何でもいいから、愛茉がやりやすいようにやればいいよ」
「あのねっ!これは2人の問題なんだからねっ!」
半ば投げやりな言い方をしてしまったので、愛茉がキッチンカウンターに拳をドンと叩きつけた。その剣幕に、思わず椅子から転げ落ちそうになる。
「……す、すみません……」
「ちゃんと2人で考えるのっ!分かった!?」
「わ、分かりました」
「じゃあチェック項目1から順番に決めていくからね!いいですね!?」
「は、はい」
それから、細かすぎる50項目をひとつひとつ順番に確認させられた。「どうでもいい」「どっちでもいい」は禁句だ。グレーな回答は許されない。オレは愛茉の顔色を窺いながら、丁寧な受け答えを心がけた。
ああ、なんだか未来の自分の姿が見えた気がする。オレは確実に、尻に敷かれるわ。
***おわり***
「なんこれ」
「同棲するにあたって決めておきたいことリスト、作りました」
出たよ。愛茉は細かくて神経質だから、同棲するとなるとアレコレ気になることが出てくるだろうとは思っていた。
正直、面倒くさい。ただ愛茉の機嫌を損ねる方が大惨事なので、仕方なくリストに目を通した。……いや、ぱっと見でも項目が多すぎるだろ。
「こんなにあんの?」
「えー?たった50個じゃない」
……もう何も言う気にならない。よくこんなに思いつくな。
生活費はどう管理するか……これは確かに、決めておいた方がいい。家事の分担……できる方ができる時にやればよくないか?
あとは……風呂に入る頻度、朝シャワーは浴びるのか、トイレットペーパーはシングルかダブルか、ベッドのどちら側に寝るのか、休日の朝は何時頃起きるのか、友人などを自宅に呼ぶか、飲み・遊びの頻度、予定の報告はどのようにするか……細かい。細すぎる。
「……なんか、今更って感じじゃね?ほとんどオレの家に泊まってるのに」
「お泊まりと一緒に生活するのは別です!」
「いやまぁそうなんだけど。ベッドのどちら側に寝るかとか、もう決まってんじゃん」
「改めて確認したいの。それによって、どっち側に私の机置くか変わってくるし」
ちなみに、寝る時のポジションは並んで歩く時と同じだ。オレは自分の左側に愛茉がいるとやけに落ち着くし、愛茉もオレが右側にいる方がいいらしい。だからこの項目はもうオッケーだな。
「この風呂に浸かる頻度ってのは……」
「水道代とガス代の問題です。節約できるところはしたいから、毎日お風呂を溜めるのはなぁ……って。ここの浴槽大きいし」
「一緒に入ればよくね?」
「……毎日はヤダ」
愛茉が頬を赤らめる。たまにならいいってことか。そこはしっかり覚えておこう。
「それよりも大切なのは、やっぱりお金のことだと思うの。きちんと家計簿つけて管理しなくちゃ」
「え、めんどくせ」
「だから、それは私がやります。桔平くん名義で共同口座を作って、そこに生活費をお互いに入金するの。そうしたら管理が楽でしょ?」
「あぁ、まぁね……オレは何でもいいから、愛茉がやりやすいようにやればいいよ」
「あのねっ!これは2人の問題なんだからねっ!」
半ば投げやりな言い方をしてしまったので、愛茉がキッチンカウンターに拳をドンと叩きつけた。その剣幕に、思わず椅子から転げ落ちそうになる。
「……す、すみません……」
「ちゃんと2人で考えるのっ!分かった!?」
「わ、分かりました」
「じゃあチェック項目1から順番に決めていくからね!いいですね!?」
「は、はい」
それから、細かすぎる50項目をひとつひとつ順番に確認させられた。「どうでもいい」「どっちでもいい」は禁句だ。グレーな回答は許されない。オレは愛茉の顔色を窺いながら、丁寧な受け答えを心がけた。
ああ、なんだか未来の自分の姿が見えた気がする。オレは確実に、尻に敷かれるわ。
***おわり***