ホウセンカ
「やっぱり今日は舞い上がってんな。なんでこんなにベラベラ喋ってんだか」

 苦笑しながら、桔平くんがまたお酒を一口飲んだ。
 好きだって言われて、好きって言えて。これで舞い上がらない人なんていないよ。私だって、ずっと心がフワフワしているんだもん。
 
「もっと舞い上がっていいよ。桔平くんのこと、大好きだから」

 もっともっと、舞い上がっていたい。ずっと噛み締めたい。今日感じた気持ちのひとつひとつに名前をつけて、宝石箱にしまっておきたいと思った。
 
「……キスは嫌じゃねぇって言ったよな」

 桔平くんはお酒を飲みほした後、おもむろに立ち上がる。そしていきなり私を抱き上げてベッドへと運んだ。
 
「遠慮なく、たくさんするから」

 私に覆いかぶさって、不敵な笑みを浮かべながら桔平くんが言う。あ、あれ?もしかして私、火をつけた感じ?

 優しくメガネを外されて、長い髪が頬に落ちてきた。桔平くんが飲んでいたお酒の味が口の中に広がる。酔うって、こんな感じなのかな。頭がボーっとして、体がフワフワ浮いているような感覚。すごく甘くて、体の奥から熱くなる。

 薄暗い部屋の中で見る桔平くんの顔は、やっぱり綺麗で色っぽかった。

「好きだよ、愛茉」

 私の名前を呼ぶ時の優しい声が、世界一大好き。
 何度も名前を呼ばれて、何度も唇を重ねて。自分にこんな幸せが訪れるなんて、全然想像していなかった。好きな人が自分を好きでいてくれるって、本当に奇跡なんだ。

 夢なら一生醒めないで。そう思いながら、唇から広がる桔平くんの熱を受け止めていた。
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