溺甘純愛婚。 〜財閥社長とウブな令嬢のラグジュアリーな新婚生活。
「藍梨さんは、着物も仕立て出来るんですね。本当にすごいです」
「父の伝手で和裁士の方に習ったことがあったの」
「そうなんですね、和裁士も出来そうですね!」
「いや、プロの方には敵わないよ? でも、教わった和裁士さんに失礼のないようにって思って作ってるだけなの。習ったのに、下手な着物は作れないでしょう?」
私がそう言えば、神林さんは「藍梨さんらしいですね!」と微笑みながら言ってくれた。
出来上がった反物は、紫根染めで穏やかで優しげな薄水色に極薄桜色と極薄黄色のグラデーションに四君子地紋。
これをはじめに水通しをする。水通しとは、仕立てに入る前に布地に水を通して、布目を詰めておくことが目的で仕上がった後水洗いした時に縮むのを防ぐためだ。生乾きのうちに布地の耳がつれていないか、引きつった状態になっていないかを確認し耳がつれている箇所は、裁ちばさみで斜めに切り込みを入れる。そして、アイロンをする。布地を裏を上にして置いてアイロンを、布巾の左から3分の1ずつ、向こうから手前にゆっくり動かしていく。
それを終えればキズがないか調べて、やっと仕立てが始められる。
「先にしつけするねー」
裁て終わり濃いピンク色のしつけ糸を使い、仮縫いを始める。集中してやっていると、トキさんが急いでやって来た。