溺甘純愛婚。 〜財閥社長とウブな令嬢のラグジュアリーな新婚生活。
そんな強請るなんて、出来ないよ。
ワガママな妻にはなりたくないし……それに、お昼くらい一回抜いても大丈夫なんだけどなぁと思った瞬間――盛大なお腹の音が鳴り響いてしまい、抜いても大丈夫なんて言えるはずもない。
最近は、規則正しく昼食を食べていたから習慣化されてしまったみたいだ……うぅ、恥ずかしい。
「お腹は正直だな……ははっ、元気がいい」
「……っ、す、すみません。いただきますっ」
私は、目の前にある如何にも三段の高級そうなお弁当箱には牛炭火焼や旬の食材をふんだんに使った目にも美しい弁当があった。お弁当なのにキラキラしている。
「藍梨ちゃん。すまないが、俺は会議に行かないといけないから行くが……ゆっくり食べてていいからね。帰る時は北見に連絡して、玄関まで送り届けるように伝えてあるから」
「えっ、あ、はい」
「じゃあ、行ってくるよ。気をつけて帰るんだよ」
「はい。ありがとうございます……いってらっしゃいませ」
優生さんが出て行ってしまい、広い社長室に一人になった。なんだか、寂しくて私は味わいながらも急いでお弁当を食べた。
そして彼の秘書さんである北見さんに電話をすると、すぐにノック音が聞こえて入って来たのは北見さんではなくて綺麗で仕事ができそうな女性だった。
「初めまして、私、社長秘書をしております坂下です。北見は別件がございまして私が参りました」
「そうなんですね……よろしくお願いします」
私は坂下さんに付いて来た道を通っていくと、玄関ではすでに車が停まっていた。