溺甘純愛婚。 〜財閥社長とウブな令嬢のラグジュアリーな新婚生活。
ほうじ茶がなくなってそろそろホテルのチェックインの時間になるため、カフェを出る。
だけど駅から出てすぐに名前を呼ばれた。
もう身内に見つかっちゃったかぁと振り向くとそこには私もよく知っている人で優生さんと結婚してから義弟になった優也君がいた。
「どうしたの、その荷物……」
「あ……優也くん」
私は遅いと思ったけど、良い返事が思い出せなくて彼から逃げるように反対方向に走り出す。
「……ちょっ、藍梨!?」
慌てた声で私の名を呼ぶと彼は陸上部だったから足は早く当たり前のように捕まってしまった。そして彼は私が指輪をしていないことに気づく。
「藍梨、指輪は」
「……置いてきた。私、離婚しようって思って離婚届と指輪置いて出てきたの。だから放っておいて!」
「どういうこと、何があったかは知らないけど放っておくのはできない」
そう優也くんは言うと私のキャリーケースをサッと奪うと、私の頭に手をポンと置いた。