【2025春・書籍化予定】溺甘純愛婚。 〜財閥社長とウブな令嬢のラグジュアリーな新婚生活。
 

 スリッパはふわふわで履き心地がいい。それに絨毯の上を歩けばふかふかしていて、掃除するのが大変そうだなと現実的なことを考えてしまう。

 というか、こんなところに住むのか……大丈夫かしら。


「藍梨ちゃん、大丈夫? 行こうか」

「あ、はい」


 男性に案内されて、突き当たりの部屋に入るとそこはリビングのような場所だ。中に入りよく見るとリビングと、ダイニングキッチン、和室が繋がりひとつの空間になっていてダイニングのテーブルに近づき椅子に座ると、女性の一人がお茶を出してくれた。


「……ありがとうございます」


 お礼を言うとニコッと微笑んでくれて微笑み返すと「藍梨ちゃん」と優生さんに名前を呼ばれ、そちらを向く。


「紹介するね、この屋敷の管理をしている執事の吉田。それで、家政婦のトキさんに阿部さん、神林さん。屋敷で雑務や藍梨ちゃんのお世話とかお手伝いしてもらうことになってる」

「お手伝い?」

「あぁ、草木染めの手伝いをしてくれる。二人は株式会社アイラで働いていたが、妊娠出産で退職したそうで仕事を探していたところを捕まえたんだ。阿部さんは芸術大学出身で染織を学んでいたし、神林さんはファッションの専門学校でアクセサリーデザインを学んでいて現役のアクセサリーデザイナーだ」

「え、プロの方じゃないですか? それにアイラって、ファッション業界じゃ大手ですよね? 私なんて無名なのに」

「藍梨ちゃんは草木染で作った雑貨を販売してるだろ?」


 え、ご存知で……あれ、私言ったっけ?

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