【2025春・書籍化予定】溺甘純愛婚。 〜財閥社長とウブな令嬢のラグジュアリーな新婚生活。
10.幸せ
結婚式から一週間。
ずっと結婚式の準備とかで忙しい日々だったが、私は日常へと戻っていた。
「奥様、綺麗な黄色に染まりましたよ」
「ありがとう、本当ね……ふふ」
手元にあるのはダイヤーズカモミールと銅媒染で染めた糸やストールだ。このダイヤーズカモミールは、染用のカモミールで銅媒染で染めると濃い黄色に染まって鉄媒染だとモスグリーンに染まる。
ダイヤーズカモミールは実家の畑で育てていてこの時期になると咲くので毎年楽しみにしているものだ。これもお父さんに半分譲ってもらった分だ。
「今回は糸が多めなんですね。何か作る予定でもあるんですか?」
「うん。大判のショールを作ろうと思ってね。もうすぐ、マルシェがあるし」
「そうなんですね、もしかして編むんですか?」
「そうだよ、本当は織り機でやっちゃいたいけど編んだ方が綺麗だし……それに好きなんだよね、編むの」
そう言うと「奥様らしいですね」と一緒に染めるのをしてくれた阿部さんが呟く。
「私なら織り機一択ですよ〜編み物は大変だし……神林さんはするのかなぁ、得意そうだし」
確かに、私よりも出来そうな今日はお休みの神林さんのことを思い出していると家政婦のトキさんが工房までやって来てお茶に誘ってくれて本邸へ戻った。