断罪されて死に戻ったけど、私は絶対悪くない!
“やっぱりどう考えても、私を殺した男とか無理……!”

 あんなにミルシュカへ淑女を強調しておいて、こんな口付けひとつで笑顔をひきつらせるなどあまりにも滑稽。
 だがやはり生理的に受け付けないものは受け付けない訳で――


「……申し訳ありません、本日はこの辺で」

 そそくさと立ち上がり、侍女としてついてきているミルシュカとその場を後にした、の、だが。


「あ、あら?」
「どうかされましたか、ビクトリア様」
「私の扇がありませんの」

 ふといつも持っている扇がないことに気付く。

“もしかして手の甲に口付けされた時に落としたのかしら”
 
 別に扇ひとつ惜しいものではないのだが、もし落とした扇をニコラウス殿下が拾い、それを理由に家にまで来られたら……なんて考えゾッとした。

「ミルシュカ、悪いんだけどさっきの庭園まで探しに行ってくれないかしら?」
「かしこまりました」

“私が行って、再びニコラウス殿下との鉢合わせは避けたいものね”

 そう考えた私がミルシュカに頼むと、すぐに頭を下げて来た道を引き返す。
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