断罪されて死に戻ったけど、私は絶対悪くない!

5.逃げ場がない? このパターンは想定外よ

「おかえり、というべきだろうか?」

 ミルシュカを廊下の端で待っていた私は、突然聞こえたその声にハッとした。
 そしてその声の正体に気付き慌てて頭を下げる。

「アンドレアス第一王子殿下にご挨拶いたします」
「堅苦しい挨拶は必要ない。俺は変わり者の外れ王子だからな」

“また反応しにくいことを……”

 まるで私を値踏みするようなその赤い瞳に息を呑んだ私は、なんて返すべきか迷い口をつぐんだ。

 
 変わり者の外れ王子、それは貴族たちが裏で呼んでいるアンドレアス殿下の蔑称。

“まさかその言葉をアンドレアス殿下から直接聞くなんて”
 
 第一王子であり王位継承権第一位の彼がそう呼ばれるのも理由がある。

“表舞台に出ない王子――”
 

 奇跡の力、魔法。
 その奇跡の力を閉じ込めたものが俗に魔道具と呼ばれるものになるのだが、今はもう失われた古代の技術だ。

“おそらく私の時間が巻き戻ったのも、あのお祖父様からいただいた魔道具の力……”

 そしてその魔道具に『惑わされた』ともっぱら噂されるのがまさにアンドレアス殿下その人である。
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