断罪されて死に戻ったけど、私は絶対悪くない!

6.「おかえり」と告げる声の主

“ごめんなさい、ミルシュカ”

 以前の宿敵、そして今は信頼出来る侍女である彼女へと内心謝罪する。

 私の扇を見つけた後に今度は主人である私を探させることになるなんて。

“そして今度は扇のようには見つからないわ”

  
 何故ならば、場所として提案されたのがアンドレアス殿下の私室だったからだ。

  
「さぁ、入ってくれ」
「ッ、かしこまりました」

“まさか殿下の私室へ入る日が来るだなんて……!”

 いくら殿下の命令であっても、未婚の令嬢である私が足を踏み入れるには『私室』という場所はあまりにも不適切。
 万一殿下のお手付きになった場合、それがただの噂でも結婚相手を探すことが困難になる。

 だからこそ本来ならば場所を庭園など開けた場所にして貰うべきだというのはわかっていたのだが。

 
「互いにメリットはあるだろう?」

 そう言われれば頷くしかなかったのだ。

“そもそもニコラウス殿下の婚約者候補筆頭である今、他の貴族令息からの婚約申込みなんて来るはずがないし”
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