断罪されて死に戻ったけど、私は絶対悪くない!
 政略結婚故の淡々とした婚約期間を過ごしていたやり直し前は、まさか自分がこんなに気安く言葉を交わしながら一緒に出かけるだなんて想像もしていなかった。

“何も悪くないからと自分を変えるつもりなんてなかったのに”

 この心情の変化を不思議に感じつつも、悪くないと思えるのは何故なのか。
 まだその答えは私の中にはないけれど――


「んんっ、少し自分勝手にはしゃいでしまったことを詫びよう。次はビビが興味のあることを教えてくれないか?」

 そっと繋ぎ直された手を、私もきゅっと握り返す。

「そうですね、私の侍女が今は新しい人気のデザートがあるのだと言ってました。アレス様は甘いものを召し上がられますか?」
「研究に適度な糖分は必要だからな」

 結局私たちはその店では何も買わず、本物の恋人同士のように手を繋ぎ次のお店へと向かったのだった。
 
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