断罪されて死に戻ったけど、私は絶対悪くない!
 だからこそ、今最も心配すべきは危害を加えられることではなく、私の貞操。……というか、この状況ではそれしかない。 
 そして子種を注がれてしまってはニコラウス殿下へと嫁ぐしかなくなる。

“それを狙ってるはず!”

 衣服の乱れがないことに安堵した私は、少しでも早く体が動くようにと祈りつつ部屋の中を見渡して――


「おや、気付きましたか? ビクトリア嬢」
「……え?」

 そして、声をかけられた事に驚いた。
 ――否。声をかけてきた『相手』に驚いた。



「さ、宰相様……?」

 薬を飲ませたのはニコラウス殿下だったはずなのに、この部屋にいるのは殿下ではなく宰相だというその違和感に唖然とする。

“どういうこと?”

 ニコラウス殿下から助けてくれた、と断定するのはまだ早い。
 この状況にごくりと唾を呑んだ私は、まだ上手く動かせない体に鞭を打ってなんとか上半身を起こした、のだが。


「――ひっ!」

 体を起こし視界が変わったことで私の目に飛び込んできたのは、焦げ茶色の髪の毛。
 床にうつ伏せで倒れているが、きっとその瞳は琥珀色だろう。

「に、ニコラウス殿下……!?」
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