断罪されて死に戻ったけど、私は絶対悪くない!
「――――ってことがあったんだ」
「ま、まぁ……それはその、御愁傷様としか……」

 その妖艶な赤い瞳を細め、くすくすと私の隣で笑っているのは、今ではこの国の王太子となられたアンドレアス殿下である。

「我が弟ながら、王城中へとなかなか可愛らしい叫び声が響き渡ってな」

 その叫び声で駆けつけた王城メイドもこの国の第二王子と宰相が裸で寝ているという惨事に叫び声を上げ、その叫び声に釣られてまた叫び声を上げたニコラウス殿下と、その騒ぎで流石に目が覚めた宰相までもが叫び声を上げるという、なんとも奇っ怪でおぞましい事件のひとつとして闇に葬られることになった――らしい、が。

“噂を止めることって出来ないものね”

 どこから漏れたのか、そしてどう伝わったのかはわからないが自分の子供くらいの年齢のニコラウス殿下を、なんでも『精液が透明になるくらい何度も抱いた』宰相は変態だと今ではこの国の貴族全員が認識しているという。

 もはや辞任待ったなし。
 

“ニコラウス殿下の太ももに塗られたのは媚薬だったはずなのだけれども”

 もしかしてその媚薬の効果で本当に二人は……なんて邪推しかけた私は、今では王太子妃というより責任のある立場なのだから、とそれ以上未確認の出来事を考えるのはやめた。
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