籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜
「…わりぃ。水を飲もうとしたら、うまく体が動かなくて…」


見ると、サイドテーブルの下にはキャップが外れて中身が床にこぼれているミネラルウォーターのペットボトルが転がっていた。


「水なら、わたしが新しいものを持ってくるから…!」


玲をベッドに戻し、わたしは新しいミネラルウォーターを取りにいった。


ベッドの真横にあるサイドテーブル。

その距離ですら、手を伸ばして水を取ることができないなんて…。


玲の体調は、思っていた以上に深刻だった。

主な症状は、高熱、体の痺れ、倦怠感。


裕一くんは、“ちょっとアヤシイ薬”なんて言っていたけど、…“ちょっと”どころじゃない。

なんともなかった玲の体調をまたたく間に悪化させたのだから、あれはとてつもない毒薬だ。


汗が滴り落ち、苦しそうに息をする玲の姿を見ていたら、やっぱりわたしが飲んでおけばよかったと後悔した。
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