籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜
だけど、わたしも今さらなにを言っているのだろう。

妃候補になったときから、少なからず覚悟はしていたはずなのに。


恐怖と不安で震えるわたしの肩に、そっと玲が手を添えた。


「大丈夫だ。俺がうまいこと言っておくから」


顔を上げると、玲がやさしく微笑んでいる。


「体調が優れないからと、俺から十座に伝えておく。だから、お前はここにいろ」

「…でもっ」


そんな嘘を十座について、玲は平気なの…?

もし嘘がバレたりしたら…、玲が罰を受けるんじゃないの?


わたしだって、十座の部屋へなんて行きたくない。

できればこのまま、部屋にこもっていたい。


だけど――。


その場しのぎで今嘘をついたからって、きっとまた次がある。

十座に呼び出されるたび、ずっと嘘をつき続けるの…?


…ううん。
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