逃避行、じゃあね。
1.
中学3年生、つまり高校受験を目前に控えた私は日々の勉強で精一杯だった。
夜遅くまで塾に行って、授業は朝早くから始まって…
もう無理だ。全て投げ出してしまおう。
そんな勝手で軽率な思いつきで、まずは授業を早退してみた。
とはいえ、このまま家に帰っても怒られるだけだ。しばらく1人でぼーっとしたい。
とりあえず寄り道でもして帰ろうかな。
そんなこんなで学校を出て、気づいたら駅に着いていた。
とりあえず、インスタで見つけたお洒落なカフェでゆっくりしよう。
電車も満員じゃない。早退するのって結構楽しいじゃん。
目的地まで30分くらい、お気に入りの音楽を聴きながら車窓の景色を眺めていたら、いつの間にか眠りに落ちていた。
目が覚めると降りるべき駅は乗り過ごしていた。でも終点が海の見える街で、いいじゃんって思えるくらいには放浪することしか頭になかった。
よし、このまま終点まで行っちゃおう、だからもっと寝よう。
そう思って寝ようとした時、隣に座っていた男の子が話しかけてきた。
「具合悪そうだなって思って、大丈夫ですか?この時間ってことは、早退とか?」
そう私に聞いてきた彼はジャージを着ていて、部活の遠征があるのかな、なんて思ったり。
「ぜんぜん大丈夫です、ちょっと遠出したくて学校出てきちゃっただけなんです。」
そう答えると彼は、
「へー、なんかよくわかんないけど大丈夫そうならよかったです。」
と言って、またスマホに視線を戻した。