逃避行、じゃあね。
「…これってもしかして。」
一瞬にして記憶が呼び起こされた。
「そう、さっき瑠菜が遠足で雨の日にここへ来たって聞いて確信したんだ。2年前、瑠菜と同じ中学3年のとき、俺は傘がないから走って家に向かってて、案の定転けて。
その時に、制服の女の子がハンカチと、自分の力でうまく開けられなかったからあげるって、ガチャガチャのカプセルをくれたんだ。元気が出るようにって。
俺の鞄についてるのは、その時カプセルに入ってたキーホルダー。でもその子の制服はここらへんの学校の制服じゃなさそうだったんだ。雨でぐしゃぐしゃだったからよく見えなかったけど。
その後もずっとその子の温かい香りが忘れられなくて、で、瑠菜の隣に座った時にもしかしてって思って。
ちょうどあの時は事故で両親を亡くした時で優しさがしみたっていうかさ、もちろん人のものだしハンカチを捨てるなんてしないけど、それ以上に大事にしなきゃって気持ちが強かった。返すの遅くなってごめん…」
話しながら涙を堪えている蓮をみて、たまらず抱きしめた。
「大丈夫、なんならずっと持ってていいのに。蓮は1人じゃないよ。」
私がそう言うと、蓮は静かに涙を流した。