逃避行、じゃあね。
「それに、キーホルダーも大事にしてくれてありがとう。電車で話した時、本当に大切なものなんだなって伝わったし、それが私があげたものだったなんて、すごい嬉しい。」
私がそう言うと、ぷつりと緊張の糸が解けたように蓮が泣きだした。
「俺、これ本当に大切だからさ。どんなに辛くても元気出るし、だから…」
涙を拭おうとした時、袖がチラリとめくれた。腕にはタバコを押し付けられたような跡があった。
「ねぇ、待って、今腕に…」
「気づかなくてよかったのに、てか何もないし。」
「嘘つくの下手すぎ、ちゃんと見せて。」
強引にジャージの袖をめくると、たくさんの火傷があった。
「なにこれ…。」
いじめに違いない。まさかジャージなのも、制服を汚されたとか?
「もう瑠菜には何も隠せないや。素直に話すね。」
そう言うと、怖いくらい落ち着いた口調で徐に話し出した。