逃避行、じゃあね。
行きよりもずっと早く時間が過ぎるような気がする。何を話すでもないのに、蓮がそばにいるだけで十分で、それだけで居心地が良かった。
「そういえば、連絡先交換してないよね。」
「あ、そうだ。ちょっと待ってね…私のアカウント、これ。」
「おっけ。追加した。」
友だち一覧を見ると、蓮が追加されていた。
「また、会おうね。絶対。」
私が真面目に言ったのが面白かったのか、蓮は笑いながら、
「会わないって言ったらどうするの?」
なんて言うから、ちょっと心配になって
「なんでそんなこと言うの。」
ってムキになった私の頭をわしゃわしゃして、
「うそうそ。いつでも会えるから。」
と、言ってくれた。
「じゃ、家着いたらまた俺に連絡して。」
気づいたら、蓮の最寄駅だった。