冷酷総長は、今日も変わらず彼女を溺愛する。【After Story】
飛鳥馬家専属の着物屋に発注をかけた品物だが、我ながらここの店主は腕がいい。
ここまで繊細に、緻密に作られた着物はないだろう。
思わずうっとりとしてしまう。
「本当にかわいい。いや、美しい」
本気の声音でそう繰り返す。
あやちゃんには面倒な男だと思われているだろう。
だけど、それでもいい。
おれは過去に十分あやちゃんに痴態を晒してきたのだから。
ねちっこくて粘着質、嫉妬したところを見せないけれど本当は内心怒りの炎を必死に吹き消しているだけだという事実。
たまにあやちゃんの前でだけ幼児のようにだらけてしまうところ、あやちゃんがいなければ生きていけないこと、あやちゃんがおれの生きる意味の中心にいるということ。
ぜんぶぜんぶ、かっこ悪いことばかり。
とてもじゃないけどあやちゃんにだけは教えられない。