冷酷総長は、今日も変わらず彼女を溺愛する。【After Story】
口の中でりんごの果汁がじゅわっと溢れて、おれは目を見張った。
「…っ、うま」
「でしょ〜?美味しいね」
あやちゃんのとびきり可愛い笑顔がすぐ目の前にあって、心臓がドキンッと高鳴る。
ほんと、おれの彼女心臓に悪いんだけど……。
───かわいすぎて。
「あやちゃん、ちょっとその笑顔控えて」
あやちゃんから目を逸らして言った。
本人はおれが困っていることに気づかず、「え?」と小首を傾げている。
ああ、ほんと、それもかわいいからやめて。
かわいいに溺れそうになる。
いや、もうとっくに溺れてんのか。
「──あ、麗仁くん! 見て、花火!」
あやちゃんに服の裾を引かれ、鼓膜を震わせるほどの重低音に反射的に空を見上げた。
そこには、大輪の花が空を覆い尽くしていた。
火花が線を描き、地へとゆっくり落ちていく。
「……きれい」
そうぽつりと呟くと、隣であやちゃんが嬉しそうな声を上げた。
「ね、綺麗!」
これまでの人生の中で花火を見たことがあっただろうか。
確か小さい頃、あやちゃんと一緒に手持ち花火をしたっけ……。