愛を教えて、キミ色に染めて【完】
「まあ、俺としてはお前が伏見の姓を捨てるのは構わない。俺は別に伏見の姓を継いでもらおうとも考えてはいないからな」
「けど、もし伊織が雪城家に入るなら、このままHUNTERを続けていくのは厳しいですよね」
「うーん、まあ、そうだよな。いくら情報操作が出来るとは言え、俺らの存在が全く外に漏れない訳じゃないし、俺らに恨みを持つ組織があるのも事実だ。名家の名を継いでいるのが裏稼業にいる人間だなんて噂が立てば、面倒な事にもなるだろうからな……伊織、お前が雪城の姓を名乗ると決めるなら、その時点でお前はHUNTERから抜けて表社会で生きていくしかない」
「なっ……俺は!」
「伊織、こういう事はきちんとけじめをつけるべきだ。円香さんと一緒になるつもりならば、やはりきちんと足を洗った方がいい」

 これからもHUNTERとして生きていきたい伊織にとって、忠臣のその言葉は思いもよらないものだった。

「そうだよ、その方が円香ちゃんにとってもいいと思う。やっぱりさ、いくら納得してくれたと言っても、彼女からすれば危険な事に関わって欲しくないと思うよ? だからいっそ雪城の姓を名乗って一からやり直すのが一番幸せになれると思うけどな」
「ああ、雷斗の言う通りだ。HUNTERの事は心配いらないさ、実は以前から上層部の方でHUNTERの規模を拡大する話が出ていてな、いずれはもっと大きな組織として全国各地に拠点を置く話が出てる。そうなれば人も増えるから、今よりもだいぶ楽になるさ」
「…………もう少し、一人で考えてみる」

 伊織としてはHUNTERを抜けるつもりは無かったのだけど、二人の話しや円香との今後の事、雪城家の事を考えるとどの選択が一番いいのかが余計分からなくなり、今一度一人で考えてみる事にした。
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