愛を教えて、キミ色に染めて【完】
 こうして様々な問題が解決していき円香は暫く休学していた大学に戻るか悩んでいたのだけど、伊織を支えていくことや花嫁修業に専念することなどを考え両親とも相談した結果、退学する事にした。

 結婚の許しを得てからひと月後、結婚式は約半年後に決まり、円香の両親の希望で結婚するまでは二人雪城家の一室で生活をする事になった。

 伊織は新たな環境になった事もあって毎日忙しく過ごし、新人教育を任されていることも相俟って数日帰れない日も多々あった。

 その間円香は家政婦たちから家事のノウハウを叩き込まれ、伊織が帰らない日も淋しさを感じる暇もないくらい毎日忙しく動いていた。


「ただいま」
「お帰りなさい、伊織さん! 今日は帰って来られたんですね」
「ああ。流石に一週間職場に拘束は有り得ねぇ。人はいるんだからさ、いい加減休みが欲しいっての。それに明日はドレスの打ち合わせだろ? 休み貰ったから俺も一緒に行く」
「良かった、伊織さんとも相談して決めたかったから嬉しいです」
「それじゃ、とりあえず風呂行ってくる」
「お食事は?」
「軽く済ませてきた。疲れて食欲ねぇし、風呂出たらもう寝たい」
「分かりました、それじゃあ飲み物だけ用意しておきますね。今日は早めに休みましょう」
「ああ、ありがと」

 明日はウエディングドレスの打ち合わせという事もあり、伊織は忙しい中休みをもぎ取り帰宅する事が出来、久々に二人で夜を過ごせる事になった。

 伊織がお風呂にいる間、円香はそわそわしていた。

(久しぶりに伊織さんと過ごせる……下着、気合い入れちゃった……変かな?)

 鏡で自身の姿を確認しながら、ふと以前にもこんな状況があった事を思い出して可笑しく思っていると、

「何鏡の前でニヤついてんだよ?」
「い、伊織さん!?」
「何だ? もしかしてお前、やらしい事でも考えてたんじゃねぇのか?」
「そそそ、そんなこと、考えてませんよ!?」
「そうかぁ? その割には下着、気合い入ってんじゃねーの?」
「そ、そんな事ないです! これは、その……気分を変えただけです!」
「へぇ?」
「……も、もう! 伊織さんの意地悪!」
「悪かったよ。ほら円香、こっち来いよ」

 からかった事を謝りながらベッドに座った伊織は円香を呼び寄せる。

「私、もう怒りました! 今日は一緒のベッドで寝ません」

 頬をふくらませ、隣にある自身のベッドに向かおうとする円香だったけれど、

「駄目だ。お前は俺と一緒に寝るって決まってんの」

 腕を引かれた円香はそのまま伊織のベッドに倒れ込んでしまった。
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