愛を教えて、キミ色に染めて【完】
(ど、どうして? 知ってはいけない事を知ったのに、そんな私と付き合うの?)

 それでも、殺されるかもしれない事を考えると、円香はそれに比べれば付き合う方が何倍も良いと思い、

「わ、分かりました、ふ、不束者(ふつつかもの)ですが、よろしくお願いします」

 軽く下を向いて、そう返事を返したのだ。

 それには、流石の伊織も驚いていた。自分から提案した事とはいえ、まさか、そんな言葉が返ってくるとは思っていなかったからだ。

(とんだ女だな。まあ、潔良いのは嫌いじゃねぇけど……)

 円香の言葉に驚きつつも僅かに口角を上げ、

「……そうか、分かった。それじゃあまずは、ゆっくり語り合うとしようか」

 ひと呼吸置いた伊織はその台詞と共に俯いていた円香の顎を持ち上げると、強引に唇を奪った。

「――っんん!?」

 突然の出来事に驚く事すら出来なかった円香はされるがまま。

(く、苦しい……何、これ……)

 人生初めてのキスだというのに、緊張するどころか息をするのもままならない程強引で激しい口付けに、円香の身体から力が抜けていく。

「ん……、……っは……」

 辛うじて息継ぎは出来たものの、間髪入れずに塞がれてしまう唇。

 そして何度目かの激しい口付けの後、力が入らなくなった円香はその場に崩れ落ちそうになると、その身体を伊織によって支えられた。

「おいおい、まだキスだけだぜ? そんなんで最後までもつのかよ?」
「さいご、まで……?」

 伊織の言っている意味がよく分からずその言葉の意味を問いかけようとすると、

「ひゃあ」

 今度は軽々と身体を抱き抱えられた事に驚くも、何かを発言する間も無く円香の身体はベッドへ運ばれていき、

「ふ、伏見……さん?」

 優しくベッドに寝かせられた円香の上に、着ていたシャツを脱いで上半身を露わにした伊織が跨った。

「あ、あの……!」
「何だよ? 俺ら子供(ガキ)じゃねぇんだし、これくらい普通だろ?」
「そ、そんな……私……」
「いいから、もう黙れよ」
「あ、伏見さ――」

 まだ何か言いたさげな円香の言葉を遮ると、再び唇を塞いだ伊織。

 先程以上に身動きが取れない円香は抵抗すら出来ず、弱々しく身を(よじ)るだけ。

「ん……、ふぁっ……」

 伊織は唇や耳朶(みみたぶ)にキスをすると、今度は首筋へ移していく。

 そして、

「この格好も、誘ってるとしか思えねぇよな」

 そう言いながら円香が羽織っていたニットカーディガンのボタンを外す伊織。

 あっという間にカーディガンは脱がされてしまい、円香は下着のみの姿になる。
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