愛を教えて、キミ色に染めて【完】
それからどのくらいの時間が経ったのだろうか。
互いに果てて眠ってしまった二人。
円香がふと目を覚ますと、すぐ横では伊織が寝息を立てていた。
抱きしめられた状態で眠っていた円香はその温もりが温かいのと大好きな伊織がすぐ傍に居る事が嬉しくて、ふいに涙が滲む。
(伊織さん……。もう、離れたくない……。傍に、いて欲しい、ずっと……)
幸せなはずなのに、涙が出るのは何でなのか円香には分からない。
そんな彼女に気付いたのか、伊織もまた目を覚ます。
「どうした? 何で、泣いてんだよ?」
「わ、わか……んない、んです……。なんだか、いきなり、なみだが……っ」
こうして彼女を不安にさせてるのは自分だと、伊織は分かっていた。
今がこんなにも幸せなのに、その幸せが続くのか分からない不安が怖いのだ。
それでも、今の伊織にはただ彼女を抱き締めて安心させる事しか出来ない。
「泣くなよ、怖い事なんて何もねぇよ」
「っう、……ひっく……」
「大丈夫だ」
「……いおりさん……」
「ん?」
「……っ、ずっと、そばに、いてくれますか?」
「……今こうしてここに居るだろ?」
「そう、だけど……ちがくて、これからも、ずっと……です」
「…………ほら、もう少し寝ろよ。こうしててやるから」
「…………っ」
円香の問いに、伊織はハッキリ答えなかった。
『ずっと傍に居てくれるか?』という質問には、どうしても答えられなかった。
それは伊織自身、これからどうなるか分からないと思っていたから。
雷斗のお膳立てで再び愛を育み始めた伊織と円香。
ちょうどそのタイミングで次のターゲットとの接触の機会を窺うべく、とある企業で働き始めた伊織が会社近くに部屋を借りた事もあって、円香は大学終わりや休日に部屋を訪ねるようになり、会いに来れば当然帰る頃には離れ難くなる訳で、いっそ泊まってしまおうかと思う事は最早日常茶飯事だった。
けれど、近頃頻繁に外出をしている事を両親が怪しみ始めていると気付いた円香はこれ以上怪しまれない為に早めの帰宅を余儀なくされていた。
互いに果てて眠ってしまった二人。
円香がふと目を覚ますと、すぐ横では伊織が寝息を立てていた。
抱きしめられた状態で眠っていた円香はその温もりが温かいのと大好きな伊織がすぐ傍に居る事が嬉しくて、ふいに涙が滲む。
(伊織さん……。もう、離れたくない……。傍に、いて欲しい、ずっと……)
幸せなはずなのに、涙が出るのは何でなのか円香には分からない。
そんな彼女に気付いたのか、伊織もまた目を覚ます。
「どうした? 何で、泣いてんだよ?」
「わ、わか……んない、んです……。なんだか、いきなり、なみだが……っ」
こうして彼女を不安にさせてるのは自分だと、伊織は分かっていた。
今がこんなにも幸せなのに、その幸せが続くのか分からない不安が怖いのだ。
それでも、今の伊織にはただ彼女を抱き締めて安心させる事しか出来ない。
「泣くなよ、怖い事なんて何もねぇよ」
「っう、……ひっく……」
「大丈夫だ」
「……いおりさん……」
「ん?」
「……っ、ずっと、そばに、いてくれますか?」
「……今こうしてここに居るだろ?」
「そう、だけど……ちがくて、これからも、ずっと……です」
「…………ほら、もう少し寝ろよ。こうしててやるから」
「…………っ」
円香の問いに、伊織はハッキリ答えなかった。
『ずっと傍に居てくれるか?』という質問には、どうしても答えられなかった。
それは伊織自身、これからどうなるか分からないと思っていたから。
雷斗のお膳立てで再び愛を育み始めた伊織と円香。
ちょうどそのタイミングで次のターゲットとの接触の機会を窺うべく、とある企業で働き始めた伊織が会社近くに部屋を借りた事もあって、円香は大学終わりや休日に部屋を訪ねるようになり、会いに来れば当然帰る頃には離れ難くなる訳で、いっそ泊まってしまおうかと思う事は最早日常茶飯事だった。
けれど、近頃頻繁に外出をしている事を両親が怪しみ始めていると気付いた円香はこれ以上怪しまれない為に早めの帰宅を余儀なくされていた。