愛を教えて、キミ色に染めて【完】
「初めまして、雪城 円香です……」

 夜、繁華街にある居酒屋の個室にて、円香が参加する事になった合コンが開始された。

 参加メンバーは男性会社員五名、女子大生五名の計十人。

 傍から見ると、全員が美男美女という円香たち一行は、店内に入った時から人目を引いていた。

「円香ちゃんはまだ十九歳なんだ? じゃあお酒は飲めないんだね」
「は、はい」

 個室に案内されて男女交互に座り一人ずつ自己紹介をし終えた一同。

 そんな中でも円香は唯一の十代で一人だけお酒が飲めず、おまけに異性が苦手で人見知りという性格も邪魔をして雰囲気から馴染めずにいた。

(はあ……お酒も飲めない、話すのも苦手じゃ、やっぱり楽しめない……かな)

 それでいて円香の席は一番端っこと来ているので、自ら発言しない限り会話にも入れなさそうだと不安になってしまう。

『乾杯~!』

 飲み物や食べ物が運ばれて来るや否や、一人の男性が乾杯の音頭をとって合コンという名の会食会が本格的に始まり、最初こそ周りも気を使って話しかけてくれたものの合コンで皆出逢いを求めている訳で、いつまでもノリの悪いに人に構っては居られないのか徐々に会話に入りきれない円香は一人あぶれてしまう。

(どうしよう、もう、帰りたい)

 この上なく居づらい空気を感じた円香が帰りたいと俯いていると、

「大丈夫? 具合、悪い?」

 唯一隣に座る男性が楽しめていない円香に声を掛けたのだ。

「あ、いえ……その、こういう場は初めてで、なかなか、馴染めなくて……」

 突然声を掛けられて驚いた円香は勢い良く顔を上げると、思っていた事をこっそり打ち明ける。

「そっか。まあ、かく言う俺も実はこういう場は苦手なんだよ。今日も数合わせで連れて来られただけだしさ」
「え? そうなんですか? 実は私も急遽頼まれて来ただけなんです」
「そうだったんだ? それじゃあ俺ら、仲間だね」

 そう言って爽やかな笑顔で笑いかける男性に、円香の胸はキュッと高鳴った。

(えっと、この人は確か……伏見、伊織さん……だったかな? すごく、良い人だなぁ)

 自分を気にかけてくれる優しい男性に胸を打たれた円香は彼の名前を思い出して良い人だと認識する。

 しかし、円香の隣に座る爽やかイケメン男性は他でも無い伊織で、彼は【HUNTER】としての依頼を遂行する為に会社員としてある企業に潜り込み、ターゲットの男と接触する為に人脈作りをしている最中だったのだ。

 そうとは知らない円香は伊織のお陰で少しだけ場の雰囲気に馴染む事に成功すると、時間が経つにつれて皆と話せるようになり、席替えをする頃にはそれなりに楽しめるようになっていた。

 ただ、その席替えで悲劇が訪れる。
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