愛を教えて、キミ色に染めて【完】
一方の伊織はというと、実は円香が目を覚ました段階から既に気付いているにも関わらず電話での会話を止めないのは、ある理由からだった。
――それは今から約二時間程前の事。
「マジかよ、そりゃ笑えるな」
「いや、笑い事じゃねーよ。本当最悪だよ」
「で、そのゲロ吐いた女は何者なんだよ? まさか俺らの行動に気付いた相手の?」
「いや、それはねーと思う。まぁでも、俺も最初は警戒したんだよ、合コン来てんのに全く馴染まないとことかさ」
「で、実際は?」
「ありゃただ慣れてねぇだけだな。演技でも無さそうだったし」
「へぇ。じゃあ合コン初心者の子が間違って酒飲んで潰れて、お前にゲロ吐いって訳だ」
「ああ、そうなるな。ただ、アイツは急遽参加する事になったって言ってたから一応身辺調査はした方がいいかと思う。ああいう素人くせぇ奴がスパイって事も全く無くはないからな」
「ああ、確かにな。ま、相手女なんだし、女騙すの得意じゃん、伊織なら」
「人聞き悪い言い方すんなよ。俺はな、本来女なんて好かねぇんだよ」
「その割には、女の扱い上手いじゃん」
「演技だよ、演技」
「はは、そうだったな。ま、引き続き頼むよ。こっちはこっちで進めておくからさ」
「ああ、それじゃ、またな」
という雷斗との会話が行われていたのだが、実はこれは全て円香が起きる前の事。
そして、円香が起きた段階から行われていた電話での会話は全て伊織一人による芝居で、何故そのような芝居を続けているかというと、円香が何者なのか、電話での怪しげな会話を聞いてどういう反応をするか見る為のものだった。
そうとは知らない円香は未だこっそり聞き耳を立てているのだけど、内心聞いてはいけない会話を聞いてしまったと慌てふためいている。
そんな彼女の様子を観察し、明らかに情報収集を行うスパイの類いや詐欺グループの仲間では無さそうだと再確認した伊織は電話の演技を辞め、
「あ、ようやく起きたんだ? よく眠れた?」
電話の会話を聞かれたなんて感じさせないくらいの演技を開始し、合コンの時同様、爽やかな優男風に言葉を掛けた。
――それは今から約二時間程前の事。
「マジかよ、そりゃ笑えるな」
「いや、笑い事じゃねーよ。本当最悪だよ」
「で、そのゲロ吐いた女は何者なんだよ? まさか俺らの行動に気付いた相手の?」
「いや、それはねーと思う。まぁでも、俺も最初は警戒したんだよ、合コン来てんのに全く馴染まないとことかさ」
「で、実際は?」
「ありゃただ慣れてねぇだけだな。演技でも無さそうだったし」
「へぇ。じゃあ合コン初心者の子が間違って酒飲んで潰れて、お前にゲロ吐いって訳だ」
「ああ、そうなるな。ただ、アイツは急遽参加する事になったって言ってたから一応身辺調査はした方がいいかと思う。ああいう素人くせぇ奴がスパイって事も全く無くはないからな」
「ああ、確かにな。ま、相手女なんだし、女騙すの得意じゃん、伊織なら」
「人聞き悪い言い方すんなよ。俺はな、本来女なんて好かねぇんだよ」
「その割には、女の扱い上手いじゃん」
「演技だよ、演技」
「はは、そうだったな。ま、引き続き頼むよ。こっちはこっちで進めておくからさ」
「ああ、それじゃ、またな」
という雷斗との会話が行われていたのだが、実はこれは全て円香が起きる前の事。
そして、円香が起きた段階から行われていた電話での会話は全て伊織一人による芝居で、何故そのような芝居を続けているかというと、円香が何者なのか、電話での怪しげな会話を聞いてどういう反応をするか見る為のものだった。
そうとは知らない円香は未だこっそり聞き耳を立てているのだけど、内心聞いてはいけない会話を聞いてしまったと慌てふためいている。
そんな彼女の様子を観察し、明らかに情報収集を行うスパイの類いや詐欺グループの仲間では無さそうだと再確認した伊織は電話の演技を辞め、
「あ、ようやく起きたんだ? よく眠れた?」
電話の会話を聞かれたなんて感じさせないくらいの演技を開始し、合コンの時同様、爽やかな優男風に言葉を掛けた。